『通勤』 6
他の乗客が、みないなくなったなかで、やましんは、なぜだか、ひとりで、事情聴取を受ける感じになった。
『え、やましんさん、ですな。』
さっきよりも、ちょっと、さっきだったような感じの、マーヤ警部補見習い助手が言った。
『そうですよ。』
『結構です。さて、なぜ、自分だけ残されたか。でしな、問題は。』
『そう、でしな。』
『結構です。じつは、我々の取ったデータの中でも、あなただけが、ぶつかった、あの、あそこに漂っている宇宙バイクに、見覚えがあるらしき、反応を示しております。脳が、でしな。』
『脳が、でしか?』
『さようです。その内容は、なにか? 話して頂けないかと。強制的に引き出すことはできますが、時間も手間もかかりますゆえ。お互いの為には、なりませんから。』
『わかります。』
『よかった。最近は、警察を嫌う方も多くありまして、ま、ぼくなんかは、無理もないと思います。なにせ、不祥事ばかりだし。』
『あなたのせいでは、ないのでしょう?』
『まあ、そうでしな。』
『見覚えがある、としても、似たような宇宙バイクなら、沢山あります。ただ、ほら、あの、しっぽの、マークですね。あれが、印象的だったのでしよ。』
それは、立った虎が、おお欠伸しているような状態で、右足には、なにかを踏んづけている、というようなマークである。
かなり、目立つくらいに、でかい。
あきらかに、見て欲しいのだ。
しかし、詳細に眺めたわけではない。
それは、一週間ほど、前のことである。
火星の図書館に、むかしの映画俳優みたいな、皮じゃんに、ジーンズという姿の若者がやって来たのである。
髪は、ぐちゃぐちゃで、これも、昔の名高い探偵のキャラクターみたいだった。
しかし、意外に、物腰は柔らかく、丁寧に尋ねてきたのである。
『え、じつは、この本を探しています。地球中央図書館で調べて頂いたら、戦争やら、革命やら、名高い独裁者さまの焚書やら、宇宙人の買い占めやらで、地球にはもうないらしくて。でも、火星図書館に、残っているみたい。と、いうわけです。』
『なるほど。で、遠路はるばる、いらっしゃったのですな。』
『はい。』
彼は、懐から、一枚のメモを取り出した。
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