17. 書いてはいけない詩

書いてはいけない詩 書いてはいけない詩

ああ 感情の断片 言葉の断片 叫び 悲鳴 もしくは叫びの一部

もしくは一匹のみみず どろどろと溶解していく私の 感情 感情


書いてはいけない詩 夜は更ける 孤独になる

孤独 孤独 孤独の二文字、平仮名にすれば三文字。

孤独 孤独といくら書き連ねていっても それは何を表現するわけでもない

孤独 孤独 と書かれた詩がいくつも量産されるだけのこと


書いてはいけない詩 とにかく断片はこわい

意味がわからない 不可解 こわい

すじ道立てて物事を考えられなくなる 脳裏に浮かぶのは断片だけ

だから断片 断片の詩になる それは錯乱と同じ


書いてはいけない詩 そこには一定のリズムだけ

そこに何の意味もなくなる

意味を欠いた 一定のリズムの文章があるだけ

本当に罪深いのは それがあたかも大層なテーマをもった詩のように宣伝すること


書いてはいけない詩 書いてはいけない詩を書く

読んでも何もわからない 混乱して吐き出された断片

何の注釈もつけられない そもそも一貫した意味自体を欠いているのだから

それはただがむしゃらに虚空を腕で押してみるようなもの


書いてはいけない詩 私は書いてはいけない詩を書いている

書くべき詩 → 凡庸な詩

書いてはいけない詩は常に私と一緒にいてくれる

書いてはいけない詩はしゅーしゅーと煙を吐く

その煙を吸うとたちまちむせてしまう

だから書いてはいけないんだ

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