6. つぶせ
つぶせ つぶせ
つぶせ つぶせ
さあ詩でも書こうと心の内に耳を傾けようとしたら
こんなぞっとする声がどこかから聞こえてきた
つぶせ つぶせ
今はなんだって商売になる時代だ
これは昔どこかですでに書いたことだが
自分は人に足蹴にされる存在ではなく 人を足蹴にする存在なのだと
それはそれは強く思い込まないことには やっていけないような人達がいる
今はなんだって商売になる時代だ
今はなんだって商売になる時代だし
それこそ「つぶす」ことがこれ以上ないくらい楽な
金稼ぎの方法だとみんなが気づいたら
「つぶす」ことが一級の見世物になるのだと 「つぶす」ことが
例えば秘かな満足になったり 愉快だったり
なにかそこに価値を見いだせたりすると
実務家達が、 スーツを着た男達が、 何時間もかけて
見栄えを整えることに異常なまでの情熱を燃やす連中が、
動き出す 食指を伸ばし 文明に飲み込まれて 文明に飲み込まれて
ぺろりと食べてしまう たいらげてしまう
つぶせ つぶせ
若い奴らをつぶせ 女どもをつぶせ はみだし者をつぶせ
弱い人間をつぶせ 弱い人間をつぶせ 弱い人間をつぶせ と けしかける
それを見て 大笑いする よろこぶ人間がいる
評価のためにつぶす 自尊心のためにつぶす 利益のためにつぶす
何の気なしにつぶす
つぶせ つぶせ 言われなくてもつぶしている
中は悪意のかたまりでも 社会の仕組みっていうのを盾にして
あたかも悪意などないかのように 偽装することができる
つぶせ つぶせ 他人を叩きつぶすことには価値がある
つぶせ つぶせ これも世のため人のため
つぶせ つぶせ 俺達は 私達は そうやって生きてきた
そしてきれいさっぱり忘れた
このあたりでやめておこう
はじめはもっと芸術的な詩を 隠喩を含んだ美しい詩を書こうと
思っていたのに
何行も使って おかしな感情に引きずられるなんて それならば
徹底的に推敲しよう 添削しよう こんな感情を
手を加えてしまおう 修正してしまおう
そうすれば
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