第50話 転嫁~1~
「リアナ…」
「何ですか。エレノア様。」
「本当にごめんなさい!!
どうしたらいいかわからなくて、当たり散らかしてしまって。」
「それは確かにそうかもしれませんけど。」
リアナは嬉しそうな顔をしていた。
「ヴィクトル様はあのようにおっしゃっていましたが、エレノア様は十分にご自身で対処なさいましたね。」
「…ありがとう?」
リアナは私の成長を評価してくれているようだった。私としてはまだまだ未熟な部分が多かったことを痛感したものだったから、どう反応していいものなのかわからなかった。でも、褒められたのは嬉し恥ずかしいような気がした。
ドアをノックする音がした。
「ルイーシャです。」
ドアの向こうから声がした。
「後でいいかしら?」
まだリアナとの話が終わっていない。
「できる限り早くお伝えしたいのですが。」
珍しい。普段なら要点だけ伝えて細かいことは後回しにするのに。
「いいわよ。入って。」
ルイーシャは少し青ざめた顔で口を開いた。
「失礼します。
キールの家族が捕まりました。」
「…は~!?」
思わず間抜けな声が出た。
商会関連もしくは教育係関連だろうとは思っていたけど…あまりに突拍子もないというか…予想の斜め上を…
「取り合えず、お父様はなんて?
キールはお父様の紹介よ。」
「そのヴィクトル様が急いでお知らせになったようで。
王宮でそのことをお知りになってすぐに。」
ルイーシャが手紙を見せてきた。私宛の手紙だった。
「これを読む限り、お父様もどうなってるのかわからないってことよね。
できることはこちらでするしかないわね。
……とりあえずキールを呼んで。」
三十分程でキールはやってきた。
「キール。私に話すことはある?」
「ありません。私もどうしてこのようなことになったのかは…」
「でしょうね。」
額に手を寄せた。これは頭が痛い状況だ。
「あなたが着く前にお父様から手紙が来たわ。人身売買の疑いだそうよ。」
「決してそのようなことは!!」
キールが焦ったように口を開く。
「わかってるわよ…」
「私が下手に動いても引っ掻き回すことになりそうだし、さてどうしようかしら。
キールは一旦、どこかに隔離するべきよね。
この屋敷に地下牢ってあるわよね?」
「ありますけど…」
リアナが何か含みのある言い方をした。
「なに?」
「構造上はあるのですが、使い道がなくて使用はもちろん、掃除すらされてないと…」
「私たちの掃除する場所にも地下牢は入っていないです。」
「私はそれでも…」
「…却下。」
キールの言葉を遮った。
「屋敷のどこか使ってない部屋に見張りつけてでいいかしらね。
キールはそれでいいわね?
メイド、執事と同レベルの生活水準は保証するわ。」
「そこまでしていただくわけには…」
「別にいいわよ。それくらい。
冤罪なんでしょ?」
「もちろんです。」
キールは力強く頷いた。
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