第14話 公爵家パーティー
「エレノア様、お手紙が届いております。
それと、そのお手紙を呼んでからでいいので、ヴィクトル様がいらっしゃるようにと。」
そう告げるルイーシャから私は手紙を受け取る。
おそらく商会関連、お父様が関係しているということはしかも貴族関連の手紙であることにはすぐに予想がついた。
手紙はアルジエル公爵家からだった。
封を開けると、手紙は先日スピーカーの搬入を行ったことによるお礼から始まっていた。
その後の文面は…
アルジエル公爵主催のパーティーへの参加の打診だった。
一通り手紙に目を通した後に、お父様の書斎に向かった。
「お父様、エレノアです。」
「入りなさい。」
部屋に入った私はお父様に促されて席に座る。
「もう話は分かっているだろ?」
「はい。
公爵家主催のパーティーの話ですね。」
「その通りだ。
参加そのものは普通より数年早いが特に問題はないんだが…」
それが問題だから今ここに呼ばれたと思ったんだけど。
「商会のメンバーを全員連れていくのは体裁上よくないからな。
あの二人(キールとディランのこと)は実力的に護衛もできるだろう?
しかも、男性だ。
そういう意図がなくとも、これでは公爵の主催するパーティーは警護が万全でないと言っているようなものだ。」
「でしたら、ミリアとリリアは勿論として、後はリアナを連れていく方針でどうでしょう?」
「ああ、それで構わない。」
パーティー当日
「いらっしゃい!!
エレノアさん、ミリアさん、それにリリアさん。」
そう言ってクレアさんが出迎えてくれた。
「お嬢様、はしたないですよ!」
クレアさんは後ろにいたメイドに窘められる。
「あら、ごめんなさい。
今のは見なかったことにしてくださいね。
ところでそちらの方は?」
なんかノリが軽いけどそれはさておき…
「こちらは私の専属のリアナです。」
「ご紹介に預かりました。
リアナと申します。
エレノア様の……身の回りのお世話をしております。」
リアナ、自分の担当何か忘れてるし…
確かに今は色々やってもらいすぎててわからないか……
だから私も専属としか言えなかったわけで。
「では、ご案内しますね。」
クレアさんに引き連れられて私たちは会場に向かった。
「本日は我がアルジエル公爵家の主催のパーティーにお集まりいただき誠にありがとうございます。
皆さんどうぞお互いの交流を深めてください。」
アルジエル公爵の全体挨拶の後に私とミリアはアルジエル公爵のもとへ挨拶に向かう。
「アルジエル公爵、お久しぶりです。
本日は私たちをお招きいただきありがとうございます。」
「アルジエル公爵、先日は私ミリア・フォン・ミライブをお招きいただきありがとうございます。」
「お二人ともよくいらしてくれましたね。
それにしてもこの新製品凄いですね。
普段ならパーティーの始まりは主催者が動き出したのを見て皆さん徐々に動き出すのですが。
前回のものよりも別格に素晴らしいおかげですね。」
アルジエル公爵の称賛を嬉しく思いつつ話を続けた。
「最初からこちらの商品を生産出来れば良かったのですが、初期投資に時間も資金もかかるのでそういうわけにもいかず…」
しばらく話していたのだが私が一方的に話している形になってしまった。
「…すみません、話しすぎました。」
その上、アルジエル公爵は他の人とも挨拶をしなければならないにも関わらず私がかなり時間をとってしまった。
「いえいえ、構いませんよ。
興味深い話でしたから。
それに、ここにいる方々は少々無礼なことをしてもわかってくれますから積極的に交流してくだい。
今は雰囲気を掴んで慣れることが大事ですから。」
「ご助言ありがとうございます。では、私たちはこれで失礼します。」
やっぱり無礼だったのね…
少しへこみつつ私たちはその場を離れた。
挨拶を終えた私たちはリリアたちと合流し、料理を適当に摘まみながらお披露目会であったことのある方々を中心に話していた。
「あの"スピーカー"というのですか。あれを作られてたのはエレノア様なのですよね?」
「そうですね。私たちの商会で作成しました新商品です。」
「ここで予約させていただいてもよろしいですか?」
「え?この場でですか…
パーティーが終わってからではなく?」
「ええ、アルジエル公爵がパーティー途中でも全然構わないとおっしゃっていましたので。」
私がアルジエル公爵の方に視線を向けると
『頑張ってね♪』みたいなアイコンタクトを送られたので予約を受けることにした。
「ここで商品の説明をするのは本来であれば無作法かもしれませんがご容赦ください。
家紋入りでしたらこちらの価格になります。
いくつかある決まったデザインの既製品だとこちらの価格ですね。デザインの一覧はこんな感じです。」
そう言って私たちは先程まで集まって話していた数名に商品について説明する。
説明していると挨拶を全て終えたアルジエル公爵がスピーカーで話し始めた。
「本日お越しの皆さま。
気になさっていると思います、こちらの声を届きやすくする装置を開発なさったのはそちらのエレノア様方です。
是非様々なお話しをなさってください。では今夜はお楽しみください!!」
完全に商品予約公認したな…
黙認じゃなくて公認……
パーティー後に落ち着いて行うつもりだったんだけど。
「リリア。馬車のなかに置いてある予約表取ってきて。」
「はい、わかりました。」
私たちが商品説明で疲弊しているとアルジエル公爵に話しかけられた。
「スピーカーを使っていただいて結構ですよ。」
そういうわけでスピーカーを通して簡単な商品説明を行った。
これだけ人が多いと正確な予約表を書かないとミスが発生しかねないので、リリアが戻ってくるまで時間を稼ぎながら。
リリアが戻ってくるとクレアさんとその執事と思われる人たちも何人か一緒に入ってきた。
「エレノアさん、私たちもお手伝いするわ。
お父様に言われていたから。」
クレアさんがそう言う。
…つまり、これは全て公爵の予定通りだと言うわけですか。
なんか癪だけど、諦めて頑張るとしよう。
普通にパーティーに参加していたバチストお兄様とお姉様も手伝ってくれた。
「すみません。今はまだ在庫もそこまで多くはありませんので2台まででお願いします。」
「家紋ありを2台ですね。」
「再度注文の確認を致しますね。」
「デザインはこちらからお選びください。」
終わった~!!
疲れきったが、どうにか終了した。
色々言いたいことはあるけど、私たちお疲れ様!!
「皆様お疲れ様でした。」
そう言ってリアナが私たちに飲み物を手渡した。
私たちが隅で休んでいたところアルジエル公爵とその執事たちが料理をいくらか持ってきてくれた。
「お疲れ様でした。
初めてのパーティーはどうですか?」
「あの、アルジエル公爵…
普通のパーティーはこのようなものなのでしょうか?(絶対違うと思うけど!)」
「いえいえ。普段はこのようなことはありませんよ。
とりあえず、ここからは本来のパーティーになるでしょうから頑張って下さい。
多くの方があなたたちと話してみたいようですしね。」
それから私とミリアはお互い分かれて行動した。
私にはリアナが、ミリアにはリリアがついて。
「宰相閣下お初目にかかります。エレノア・フォン・ルミナリアと申します。」
「初めまして、エレノア様。
先日はお披露目会に参加できなくてすまなかった。招待状は受け取っていたのだがどうにも都合がつかなくて手紙を送るだけになってしまった。
この場で改めて言わせてもらうよ。おめでとう。」
「わざわざ、ありがとうございます。
ですが、エイル宰相がお忙しいことも十分にわかっておりますのでで、どうぞお気になさらないでください。お手紙から充分にお気持ちは伝わってきておりますので。」
「やはり、聞きしに勝るな。
そういえば、ワロン子爵の長男のドーランを知っているだろ?」
「はい。学院で同じクラスにいるので存じ上げております。」
「彼が将来爵位を継いだときに民たちがどれ程苦しむことになろうか全く恐ろしいな。
最近は休学中にも関わらず、交遊のある者たちを集めて談笑しているというじゃないか。
ワロン子爵ももう少し自分の子息の行動に目を配ってもらいたいものだ。いや、全てわかっているのかもしれないがな。
少しは君のような勤勉さを見習ってほしいものだ。」
私は宰相閣下の話に違和感を覚えた。
話が急展開すぎる。
「そうですね。
私が彼の領地の領民であれば悪政から自身や家族たちを守るために陛下に助けを請いたいと思います。それに、我が商会の従業員がそのような扱いを受ける可能性があることを考えるとゾッとしますしね。
まあ、王国の中で陛下に助けを求めることはなんともおかしなことかと思われますけれど。」
私の返答にルード宰相は頷き、言葉を返す。
「そうだな。
ところで君は……いや。
後日、注文したものを取りに行くのが楽しみだ。
今後も期待しているよ。」
「お待ちしていますね。」
そうして私たちは会話を終えた。
その後も多くの人から様々な話を聞くことが出来た。とりあえず関係を作っておくための中身の薄い話が多かったが。
「初めてのパーティーはどうだった?
うまくいったか?」
私はパーティーから帰った後、お父様と話していた。
「そうですね。
宰相閣下にも挨拶できましたし、他の方々とも交流出来たと思います。
後は、融資の提案も受けましたね。
材料であったり資金であったり。」
「材料の融通ならお前の好きにするといい。
自分でうまくやれるだろう?
資金に関しては受けとる前に報告だけは入れておくように。」
「わかりました。お父様。
それと、ひとつお願いがあるのですが…」
「なんだ?」
「護衛を紹介していただけないでしょうか?
出来れば女性の護衛も一人二人は。」
「わかった。手配しておこう。」
「ありがとうございます。お父様。」
その後、私は自室で手紙を二通書き床についた。
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