第9話 販売開始

販売が開始されてから数日がたった。

学校が終わってミリアとお店を見て回ろうと思い、門に向かうとリアナ先生が待っていた。

「エレノア様、ダストから手紙が届いております。」


どうしたんだろう?

要約すると、

在庫不足で苦情がすごいわけね。

アルジエル公爵に宣伝してもらったお陰だね。

年が明けたばかりだから社交界シーズンだから、アルジエル公爵が使っていたとなると、見栄のためにも皆欲しいよね。

貴族のプライドってやつか。


どっちにしてもオルミスト商会にも顔を出そうと思っていたのでミリア、リリアとともにに向かう。


「ダストさん。 大丈夫ですか?」

「あ、エレノア様。ミリア様も。

エレノア様、早速なのですが、まずシモン工房と専属契約を結んではいかがでしょうか?」


「それは私もそのつもりなのでお願いします。

リアナ先生お願いしてもいいですか?」


「かしこまりました。」


ダストさんが再び口をひらく。

「ここからが本題で現状、商品の供給が全く追い付いておりません。

裕福な家庭では子供の玩具として購入する方もいて。

ですので、別の工房にも一時的に生産を依頼しませんか?

工房のリストはこちらで用意してあります。」


「これらの工房は?」

私は印のついた工房の名前を指差す。


「印が付いているのは私のオススメの工房です。

私も依頼することのある工房ですから信用に足ると思いますよ。

あと、一時的にですがうちの専属工房でも生産を行えるようにはしてありますがどうなされますか?」


オルミスト商会の工房ということは、一番始めに試作品を作ったところか。

「まず、そちらの専属工房に生産依頼をします。

リリア、手続きの書類をお願い。

あと、この印のついている工房であなたも知っていて、いいと思う工房はある?」


「この工房とこの工房。他にはここと……」

そう言ってリリアは3つの工房を指差す。

そして、書類を取りに行くため部屋を出ていった。


「リアナ先生も手伝ってもらっていいですか?」

私はそう訊ねる。


「かしこまりました。」


「リリアが選んだ工房は、先生から見て問題はありますか?」


慌てているからといって適当に工房を選んで後で問題になるのはごめんだ!


リアナ先生は少し考えて

「この工房の工房長は少し頭が固いところがあるため、この状況で依頼するには向かないかと。」


「わかりました。

では、残った2つの工房に生産依頼を出します。」


「エレノア様、書類をお持ちしました。」

「ありがとう。

立て続けで悪いけど、この2つの工房に後で向かうから連絡をいれてもらっていいかしら?」


「それは私がするわ。

私もエリーの話に乗ったのだから。」


商会を設立した次の日、私はミリアに私の商会に入ることを提案した。

そして、ミリアも商会の一員となったのだ。

今は

商会長:エレノア

副商会長:ミリア

秘書:リリア

という構成になっている。



「ありがとう、ミリア。 お願いね。」

ミリアが商会に連絡を取りに向かい、私たちもオルミスト専属工房に向かう。


こういう時、電話があればすぐに連絡が取れるんだけどな…

当分は無理だろうけど、いつか作りたい




「エレノア様、話はダストさんから聞いてますよ。

スピーカーを作るんでしょ?」

そう言って工房長が出迎えてくれた。


「その通りです。

書類はこちらに持ってきてあります。」

私はリリアに視線を送る。

すぐにリリアが工房長に、後は工房長のサインを書くだけの状態の書類を渡す。


「契約内容に納得いただけたらサインをお願いします。」


「わかりました。」

工房長はそう言ってサインをする。


「あの工房長、内容はご確認いただけましたか?」


「別にそんなことしなくたって大丈夫ですよ!

ダストさんが紹介したエレノア様がそんな事するわけないからな!」


いや、信用されているのはいいんだけどさ、仮にも工房長としてこれでいいのか……

誰が騙すかわからないんだよ。


「ダストさん。

この書類に問題がないか確認してもらっていいですか? 不備がある可能性もあるので。」


私はそう言ってダストさんに工房長がサイン済みの書類を手渡す。

サイン済みの書類を確認するって何よ!!

普通確認してからサインだよね?


「問題ないようですね。

依頼料もこれぐらいが適当かと。

普通であれば純利益の10~20%くらいになるようにしますが、今は急ぎですからね。」


もしかして、シモン工房にも今の急ぎの期間中は取り分の比率変えた方がいいのかもしれない?


今の契約だと、50日ごとに専属契約金をはらい、それとは別に工房で生産したものの利益分のうち15%を払う仕組みになっている。

専属契約金でかなり払っているから、今回の件で他の工房より儲けが少なくなることはないだろうけど。

生産者との良好な関係は大切だ!

今回の件が落ち着いたら、ボーナスとして追加金を渡そう。



残る2つの工房にも向かう。

ミリアが話を通してくれていたので、話はすぐに済んだ。


後日、専属ではない3つの工房から在庫をそれぞれ500ほど納入してもらいった。

ついでに子供用に一回り小さくデザインが可愛らしいものも。


だって、1家に1つくらいの気持ちだったのにさ!

貴族は5~10個買うんだもん!

そもそもこんなに広まるとは思っていなかった。

お父様がルード宰相にメガホンの話をしたら、ルード宰相もこれを気に入って勧めまくったからさ。

アルジエル公爵を仲介して私宛に注文の手紙来たしね。

貴族に売れまくっているのはこの2人の威光な気がする。本当に感謝!


貴族用はそこそこ高めに設定したあったのに。

市場での物価から考えて1シルで100円ぐらいだから米ドルと同じくらいか。

1つ200シルで販売したから、2万円くらいか。

でも、機械で大量生産とか出来ないわけだし、表面のデザインも凝ってるから適正価格に少し上乗せしたぐらい。

そこまで悪質な商売はしていない! はず……

庶民用は50シルだから良心的です!


そういえば、王国の貨幣は、鉛、青銅、銀となっている。四角い鉛貨幣が1シル、丸い鉛貨幣が10シル、四角い青銅貨幣が100シル、丸い青銅貨幣が1,000シル貨幣、銀が10,000シル貨幣だ。


金や純銅はほとんどない。金属の精練技術が足りないのだ。

銀はどうに精錬できる程度だ。

一応鉄製品もあるのだが、鉄は全て帝国からの輸入らしい。



それはそうと、これでスピーカーの試作品の生産が始められる。

私はシモン工房へ向かった。


「シモンさん。

前に話した"スピーカー"の試作品を作ってもらっていいですか?」

「試作品自体はもう出来てます。

先日作ってみたんです。」


え?仕事が早い!!


「これです。」

そう言ってシモンさんはスピーカーを持ってきた。


「この前の図面通りだとこんな感じになるが、ここから声を出すという事でいいんです?」


「はい。思っていた物です。

やはり、こちらの方がメガホンよりも声が大きくなりますね。室内だとますます聞こえがいいですね。メガホンだと物足りないと言いますか…」


「ああ、それは俺も思う。

メガホンも声は大きくなってはいたんだが、スピーカーと比べるとな。スピーカーの方がかなり遠くまで声が聞こえる。」


今回は前回の反省を踏まえて在庫をある程度揃えてから販売する!

スピーカーは基本価格は20,000シルにしておく。

また、15,000シルで装飾をオーダーメイドにも出来るようにする。高いかもしれないけど貴族相手だからかなり面倒な装飾を要求される気がする…



私はシモンさんと販売に向けて話し合う。

「では、このスピーカーの基本装飾は………

装飾有りの物を11台、それ以外は装飾なしで生産を開始してください。」


「装飾なし? なんでだ?」


「装飾をオーダーメイドにも出来るようにしたいと思っています。その場合は追加料金を頂きますがね。」


「なるほどな。貴族様は自分だけの特別が好きだからな!」

そう言ってシモンさんは笑っている。


私は別に気にしないけどさ

貴族の前でそれ言っちゃうか…


「それではよろしくお願いします。

それと、スピーカーの小型化とスピーカーの性能改良をお願いできませんか?

試作品にかかる費用は別途請求してください。」


「わかりました。」


「ありがとうございます。

ではまた後日伺いますね。」

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