第8話 リリアと商会設立

学院も終わり、昨日に引き続きオルミスト商会へ向かう。 今日はミリアはおらず私だけだ。



「ダストさん、商会を作ることしました。」

「わかりました。

設立の手続きに行きましょうか。」


「その前に少しよろしいですか?」

そう言って私はリリアを見た。


「構いませんよ。 リリアこちらに。」

「はい。」

そう言ってリリアが私の前に座る。


「リリア。提案なのだけど、私が作る商会で働かないかしら?」


「えっと、私は…」

リリアは少し戸惑った様子をみせる。


「昨日、ダストさんからあなたの人となりも聞いたしわ。

あなたのこれからを見込んでお願いするわ。

私の手伝いをして欲しい。

こんな言い方はあれだけど、あなたとしても貴族の庇護下に入れるから価値はあると思うの。


でも、これは私が強制していいことではないと思うの。

この言葉に貴族の言葉としての強制力を持たせるつもりはないからあなたが決めて。

これは命令ではなく提案だから。」


「リリア、本当にどうしたいかを答えればいい。

私はお前がどちらを選ぼうと構わない。

最終こちらに戻ってきても受け入れるつもりだ。

それに、エレノア様もお前がこっちに戻ってきて、それに文句を言うような方ではない。」

ダストさんもリリアにそう言う。


リリアは少し悩んでいるようだった。


「……エレノア様、よろしくお願いします。

商会長、後で父への報告を手伝ってください。」


「わかっているよ。」


こうしてリリアも私の商会を手伝ってくれることになった。


リリアほどの学力レベルを持ち、しかも信用できる人材を捕まえるのはそう簡単ではない。今はまだ足りなくてもこの先絶対に頼りになる。




「それでは、商会組合に向かいましょうか。」

ダストさんがそう言い、私たちは馬車に乗る。


商会等、商売をする際は商会組合で店を登録する必要がある。商会組合に入っていないと商売をしてはいけないのだ。商会組合は王都に本部があり、王国のあちこちに支部がある。

また、商会組合では特許登録を行う役割もある。

特許製品は先10年独占販売が出来る。

その後50年は特許使用料を払って他の人も作ることが出来るようになり、最終的には誰でも作ることが出来るようになる。



「商会の登録ですね。

それではここに設立する商会の名前等を書いてください。」


商会の名前か!

考えていなかった。


「……エリーア商会なんてどうかな?

私の"エリー"とリリアの"リア"を組み合わせて。」


私は皆に訊ねる。


「私の名前の一部を使うなんて恐れ多いですよ。」


リリアは自分の名前が使われることに焦っているが、リアナ先生もダストさんも問題なしとのことなのでこの名前で決定した。


今後、ミリアを巻き込んでしまう可能性も考慮してこの名前を提案したのだ。ミリアだって下の二文字は"リア"だからね!

巻き込むつもりはあるけどね。


「エリーア商会ですね。

商会長はエレノア様ということですが…」

登録をしてくれている人はダストさんとリアナ先生を見ている。


「エレノア様でお願いします。」

リアナ先生がそう言い、登録は終了した。


子供が商会長とか滅多にないでしょうね。

ご迷惑をおかけしました。



「これを商品登録して欲しいのですが…」

そう言って私はこの前作った木のメガホンを見せ、実際に使用して説明する。


「では、早速登録しますね。

こちらの紙に記入をお願いします。

それと商品も1つ納入していただきます。」


「わかりました。」


書類の記入も終わった。



「これでエリーア商会も設立できましたし、商品の話を進めていきましょうか。

エレノア様はこのメガホンを販売なさるのですよね?」

ダストさんが私にそう訊ねる?


「ええ、そのつもりですが…

これを主軸とした別のタイプもいくつか作りたいと思っています。

このように棒で立てて持たなくても使えるものや、少し大きくて作るのにも手間がかかると思いますが今より音を大きく出来るであろうものも作ろうと思っています。」

私はそう言いながら図面を書く。

はじめの方はスタンドマイクならぬスタンドメガホン、もうひとつは大型の音楽スピーカーのようなものだ。


「それに関しては私ではわかりませんので工房の方でお願いします。」


そこで私はあることを思い出した。

「工房と言えば、あの工房はオルミスト商会の工房ですよね?

私も工房を見つけなければならないんですよね?」


「確かにあの工房は我が商会と専属契約を結んでいますね。

でしたら、まだ専属契約を結んでいない工房を紹介します。

あの工房から独立した人がやっているんですよ。

腕も信用できるのであまりに仕事が多すぎるときには、私どももそちらの工房にも手伝ってもらうこともありますよ。」



「着きました。 ここがその工房ですよ。」


「初めまして、エレノア様。

私はシモン工房のシモンです。

エレノア様は何を作りたいんだ……ですか?」

シモンと名乗った男はたどたどしい敬語で話始める。


「私が依頼したいのはこれです。」

私はそう言って木製メガホンと先ほど書いたイラストを見せる。


「これは?」


「メガホンと言って声を大きくするものです。」

私は用途を説明する。

「貴族用に表面に模様をいれて色を塗ったものも作ってください。

ただし、内側は色を塗るだけでお願いします。」


「わかりました。

木が傷みにくいように貴族用関係なしに塗料を塗るのは?」

「お願いします。

壊れやすすぎてクレーム来るのは嫌ですからね。

あとは……」


そうして商品の納入についても話し合う。

専属契約はお父様と話し合う必要がありそうなのでとりあえず後回し。

商品の保管はダストさんが使っていない倉庫があるらしく、とりあえずはそこを借りることにした。

これもお父様と話し合わなければ…


「あ、忘れていました!

このような形のものも作って欲しいのですが。」

私はそう言ってさっき描いたスタンドメガホンと音楽スピーカーのような形のものを描いた図面を見せる。


「スタンドメガホンと言うのか?

こっちはともかく、そっちのデカイのは作るのに時間がかかりそうです。」


「では、今は普通のメガホンとスタンドメガホンの生産だけお願いします。

スピーカーはその2つが安定してからで。」


音楽スピーカーっぽいのはそのまま"スピーカー"と呼ぶことにした。



帰ってお父様に今日のことを話した。

「お前がすると決めたことなのだから好きにしなさい。私に許可を求める必要はない。

必用があればリアナが止めるだろうしな。

倉庫の件は、ダストにいい場所を紹介してもらえ。私が払おう。先行投資だ。」


「わかりました。お父様。

色々とありがとうございます!」

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