第7話 アイデア
「エリー。そういえば、どこへ向ってるの?」
「オルミスト商会よ。」
「お店か。私も行ったことないわね。」
到着した。
思っていたより大きい!
レトロなお店だ。(現代人感覚)
「エレノア様、話はすでに通してありますので行きましょう。」
入るとすぐにリアナ先生が店員に私たちが来たことを伝えた。
「エレノア様ですね。 商会長より聞いております。ご案内しますね。」
店員はそう言って私たちを案内してくれる。
「ダストさん。こんにちは。」
「エレノア様にミリア様お久しぶりですね。」
「ダストさん。ミリアと会ったことがあるんですか?」
「はい。ミリア様のお披露目会で一度お会いしております。」
「失礼します。」
そう言って女の子が入ってきた。
お茶を持ってきてくれたらしい。
「え? リリアさん?」
思わず声に出してしまった。
お茶を持ってきてくれた人は同じクラスのリリアだった。
「……エ、エレノア様にミリア様?」
リリアも驚いた表情を見せる。
「こんにちは。」
「ええ、少し用事があってね。」
「エレノア様ミリア様、いらっしゃいませ。」
「そういえば、お二人ともリリアをご存知でしたね。私も特にエレノア様のことはリリアからも聞き及んでおりますよ。
エレノア様は筆記試験で満点で首位を取られたそうで。
おめでとうございます。」
「ありがとうございます。
ところで、リリアは商会で働く店員の娘さんかなにかなのですか?」
「支店長の娘ですね。
ここで働きながら通っています。
彼女の年の離れた兄がおそらく次の支店長になりますから、そういう意味でもここで働くことそのものにも意味があるというわけです。
将来ここで働くことも出来ますし、他の支店に行くことも容易になりますからね。」
「支店長は世襲制なのですか?」
私はダストさんに訊ねた。
「問題がなければ大抵はそうですね。
そうしておけば、幼い頃から支店長になるために教育することが出来ますからね。
ところで、今日はお話があったのではありませんか?」
「忘れるところでした。
こういうものを作って欲しいと思いまして。」
私は紙にイメージを描いていく。
作りたいのは拡声器だ。紹介パーティーでもパーティーのお開きの言葉が聞こえにくくて気づかなかったし、入学パーティーは尚のこと聞き取れなかった。
「こんな感じで、木で作って欲しいのですが…
どうかしました?」
「これは…どう使うのですか?」
ダストさんは首をかしげていた。
「声が遠くに届きやすくなるのですよ。」
私は紙を丸めてメガホンのような形を作り実際に声を通す。
「なるほど…」
「これは適当に丸めただけですが、木であればもっと音を大きくしてくれると思います。」
「エレノア様、ミリア様今からお時間ございますか?
可能であれば工房にご案内します。
そこで試作品を作らせてみてはいかがでしょう?」
「私は大丈夫ですけど…」
私はミリアを見る。
「私も大丈夫ですわ。
それに、これは面白そうですしね。」
「では決まりですねご案内します。
リリア、馬車の用意を。
ここは販売だけで、工房は離れておりますので。」
私たちも馬車に乗り工房へ向かう。
工房で、私はさっき描いたものを見せながらどういうものかを職人に説明する。
「木をくり抜いて作ればいいんで?」
「ええ、今回はその作り方でお願いします。」
「これならすぐに出来そうですぜ。」
さっそく作業に取り掛かってくれた。
それを待っている間、私たちは話をして待つ。
リリアもついてきていたので彼女も含めた3人でだ。
「そういえば、リリアは卒業したらどうするの?」
学院は勉強だけでなく、つながりを作るという意味も大いにある。貴族が優秀な人を捕まえることも例外ではない。
リリアほど頭がいいのであれば…
言い方は悪いが私としては唾をつけておきたいということだ。
「私は、商会で働くつもりです。」
「そんなに頭がいいなら、貴族のもとでも働けるんじゃない?」
ミリアがそう言う。
「今のところは考えていないです。
ドーラン…様から『平民のくせに貴族よりいい点数を取るなんて! 貴族をたてるということを知らないのか!』と文句を言われましたし。」
…絶句
あれはもうなんと言うか…
「あんなのは気にしなくていいのよ。
私たちにも何か言ってくるようなやつだもの。」
ミリアがそう言う。
"あんなの"とはミリアも相当嫌悪感を抱いているらしい。
「確かにろくなやつじゃないからね。
気にしないでいいのに。」
私もあれは嫌いだ。
他人に迷惑をかけていないなら、心の中で何を考えようと勝手だが、態度だけでなく行動にまで傲慢さが表れている。
「ミリア様、エレノア様ありがとうございます。」
「そろそろ出来たようです。」
ダストさんが私たちを呼びに来た。
工房には木製のメガホンが出来上がっていた。
「こんな感じでいいんだよな?」
「はい、思った通りです。」
私はそれを口元にあて、少し話してみる。
あんまりかな。
少しは聞こえやすくなっている気がするが…
相当の効果があるとは思えない。
「やはり面白いですね。
声が届きやすくなっています。
これは売れるかもしれませんね。」
え?そうなのか…
「それは社交辞令でなく?」
「はい、もちろんです。
それに関しては商人としてのプライドがありますから!」
ダストさんがそう言うのなら。
電池を入れるメガホンを現代で見たり使ったりすることがあった私としては物足りないが、問題はなさそうだ。
「エレノア様はこれをどのように販売するおつもりですか?」
へ?
私も欲しいから提案しに来ただけなんだけど。
あとは、アイデアが欲しいと言われたから。
「お姉さまもアイデアを出していたと、それでこれが私のアイデアのつもりで…」
「クラリス様の時はアクセサリーのデザインのアレンジであって、このように一から新しい商品ではありません。
これを我々が販売するわけにはいかないのですよ。」
なんですと!?
「どういうことですか?
何か不足が?」
「いえ、そういうわけではなく。
確かなことはわかりませんが、これを販売するとなると商品に対する権利がややこしくなると言いますか。
仮に大きな利益を産み出した場合、これはルミナリア子爵家と今後も良好な関係を続けるためには足枷となる可能性があるのですよ。
クラリス様のときはこちらが少し融通すればよかったのですが、今回は…」
ダストさんが説明してくれる。
「なら、どうすれば?」
「我々は王都に支店のない商会からの委託販売も行っていますから、そうすればどうでしょうか?」
「では、それでお願いします。」
「エレノア様、そのためには商会が必要ですよ。
帰ってヴィクトル様に相談するのがよいかと。」
リアナ先生が私に言う。
「そうですね。 帰ってお父様と相談してきます。
また後日来ますね。」
「わかりました。是非そうなさってください。」
私はお店を出てミリアたちとも別れ、家に帰る。
「お父様、どうでしょうか?」
私はお父様に商会での話をした。
「ダストは商会を作るべきと…
リアナはどう思う?」
お父様がリアナ先生に訊ねる。
「僭越ながら申し上げます。
今回お考えになった商品は今までにない全く新しい物ですから読めない部分も多いですね。
私自身としては、このような商品をお考えになったエレノア様が次はどんな考えをもたらすのか楽しみに思っていますので商会を作っても大丈夫かと思います。」
「……せっかくだからやってみるといい!」
お父様は少し悩んだ後にうなずいた。
これでお父様の承諾も得たよ!
こうして私は商会を作ることになったのだ。
商会を作るなら他にどんなものを販売しようか?
お兄様たちもいるから私は家を継げないだろうし、ミリアもそうだろうから2人で色々な物を……
想像を膨らませつつ私は床についた。
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