第5話 入学試験
今日は入学試験だ。
バチストお兄様にしごかれた成果を見せるとき!
ミリアとAクラスに入る約束をしたことをお兄様に話したら、訓練が余計に厳しくなったからね!!
試験は筆記試験と実技試験からなる。
筆記600点、実技400点の合計1000点からなり、合計点の高い人から上位クラスだ。
ただし、筆記、実技どちらかでも上位3位に入った場合は合計点が不足ていても特別枠としてAクラスが確定する。
筆記試験は普通に問題を解くだけ。
それに対して、実技試験は先生と模擬戦を行う。
模擬戦の相手は実技担当の先生ではなく、全員が同じぐらいの剣のレベルの筆記授業の先生だ。それを実技担当の先生が見て採点する。
実技担当の先生が相手ではないため先生が負けるということも時々あるらしい。
バチストお兄様もミリアのお兄様も入学試験で相手の先生に勝ったそうだ。
「私は実技3位以内を目指すわ。
3位以内でAクラスだものね。
エリーは筆記で3位以内を?」
ミリアにそう尋ねられた。
「ええ。 筆記か実技どちらかでは高得点を取りたいし、それに筆記だけでAクラスになれるならそれに越したことはないもの。」
まずは筆記試験からだ。
私たちは該当の教室に向かう。
「試験を開始してください。」
どんな問題だろうか?
算術は足し算引き算、後は簡単な掛け算割り算かぐらいで…
国語もあるんだ。基本的な読み書きと…
こっちは貴族の婉曲表現を理解しろって問題か。
ある程度の決まり文句しか問われていないけど。
しかも四択!
それでも、国語の2つの問題の難易度違いすぎないか?
他は王国の歴史とかかな。でも、これもリアナ先生に習ったし、そんなに詳しく問われてないし。歴代の王様の名前であったり呼ばれていた別称だね。
「終了です。」
「難しすぎだろ… あんな歴史一応先生から習ったけど覚えてねえよ。」
「時間足りないよ。計算終わらなかった。」
「これならどうにかなったと思うな。」
「私にかかれば余裕ですわ!」
あちこちで感想が飛び回っているが私にとっての難関は次の実技試験だ。
実技試験は順番に行われる。
私よりミリアの方が先のようだった。
「ミリア・フォン・ミライブ様、試験場に入ってください。」
「はい。」
頑張って、ミリア!
私は心のなかでミリアを応援した。
数分後にミリアは戻ってきた。
「どうだったの?」
「どうにか勝ったわよ!
先生は生徒に怪我をさせないように手加減してるようだったから。先生が本気ならば負けていたと思うのだけどね。」
「でも、勝ったのね?」
「ええ! これで一緒にAクラスにいけるかな?
エリーは筆記試験は余裕だったのでしょ?」
「でも、何が起こるかわからないから。
ミスをしている可能性もあるし。
他にも満点取れそうな人がいたら、ね。」
「エリーは何を言ってるのかしらね??…
今までで入学試験で筆記満点の方なんてあなたのお姉さまのクラリス様くらいよ!
普通はいないのよ!」
いや、いるのかよ!? しかもそれがお姉様ですか…
バチストお兄様もお姉様も優秀すぎませんかね…
「エレノア・フォン・ルミナリア様、試験場に入ってください。」
「はい! 行ってくるわ!」
「頑張ってね、エリー」
「それでは実技試験を始めます。 始め!」
先生が先に斬りかかってくる。
いや、やっぱり大人は強いね。
お兄様に鍛えてもらってなかったらすぐに負けてると思う。
それでも、普通に力負けしてるから受け流すしかないんだけど。
ミリアはこんな戦いで普通に勝ったのか…
とりあえず、受け流すしか出来ないな…
ちょっと!打ち込みが段々と強くなってきてるんだけど…
ああ!もう!!
私が一段と強い打ち込みを受け流した拍子に相手の先生がバランスを崩した。
よし!どうにか!
私は相手の首に模造刀の先端を突き付ける。
よし勝った!
「試験終了です。 相討ちですね。」
え?
ふと、下を見ると、私の首もとにも模造刀の刃があった。
ああ、惜しかった! でもこれなら充分か!
「ありがとうございました。」
私は試験会場を出る。外に出るとミリアが待っていた。
「エリー、実技試験はどうだったの?」
「相討ちだったわ。先生がバランスを崩したところをうまく攻めたとおもったのだけど、私も剣を突きつけられていて…
先生に勝ったミリアはやっぱり凄いわね。」
「エリーも自信がないって言ってた実技でこの成績なのだから十分でしょ。」
「満足はしているんだけど、後少しだったから悔しくてね…
バチストお兄様に『詰めが甘い』って言われそうよ。
結果発表は明後日よね。一緒に見に行くわよね?」
「ええ、もちろん。」
結果発表の日、私はミリアと一緒に向かった。
試験結果は上位から順に貼り出され、またクラスの貼り出しも行われる。
ただし、その中から自分を探すのは意外と大変なので結果用紙も配られる。
「早く行きましょうよ、エリー。
先に貼り出しは見るわよね?」
「そうね!」
結果を見れるのは生徒だけだ。
親まで見に来ると人が多すぎるため、学院の中には入れないことになっている。
正確には遅い時間になれば入ることが出来るわけだが。
「ミリア、やったわね!」
「エリーもよ!
ところで、あなたは良すぎじゃない?」
「ミリアもあんまり変わらないわよ!」
結果はこうだった。
《筆記》
1位:エレノア・フォン・ルミナリア 600/600
2位:リリア 488/600
3位:ルード・フォン・エルンスト 476/600
・
・
6位:ミリア・フォン・ミライブ 443/600
《実技》
1位:ミリア・フォン・ミライブ 400/400
1位:ミナ 400/400
3位:エレノア・フォン・ルミナリア 375/400
《合計》
1位:エレノア・フォン・ルミナリア 975/1000
2位:ミリア・フォン・ミライブ 843/1000
3位:ルード・フォン・エルンスト 821/1000
4位:ミナ 810/1000
5位:ドーラン・フォン・ワロン 783/1000
「だってエリー、2位と100点以上の点差かつ満点ってなによ!? しかも実技も3位!」
「ミリアも実技1位で筆記6位なのだから人のこと言えないわよ。」
「いや、言えるわ。
あなた1000点満点で975点だからね。私も総合点は2位だけどあなたと100点以上離れて853点よ。学院創設以来の快挙かしらね?
誰かは知らないけど過去の最高点が確か950点だったはず。まあ、貴族じゃなくて、平民がその点数を取ってしまったからその年は大慌てだったらしいけど。
残りはクラリス様が920点。
私のお兄様が876点。
バチスト様が937点だったはずだから…」
「ミリア、あなたよくそんな情報覚えてるわね…」
「それはそうと、実技満点が私以外にもう一人いるのね。」
「家名がないから貴族ではないようだけどね。
とりあえず、結果を受け取りに行きましょうか。」
「エレノア様にミリア様ですね。
お二人ともAクラス合格おめでとうございます。
エレノア様は筆記満点、ミリア様は実技満点ですか。お二人とも素晴らしいですね。」
そう言って、今後の案内と学年を示すバッジがを渡された。バッジは学年ごとに色が違う。また、デザインもクラスによって異なる。
「またね、ミリア」
「ええ。次は入学式で会いましょうね。」
学院の入り口ではリアナ先生が待っていた。
私はリアナ先生に手を振りながらかけよる。
「エレノア様。 どうでしたか?」
「Aクラスに合格しました!」
そう言って私は結果を報告する。
「入学試験総合1位ですか! やりましたね!
早く、ヴィクトル様たちに報告しましょう!!
でも、ついに私の最高点も越されましたか…
少し残念です。」
先生も凄い喜んでくれた。
……ん?ちょっと待って!
ミリアが言ってた 最高点の人って先生のことだったの!?
いたよ!身近なところに!!
夕食の席で結果を報告する。
「そうか。
筆記は満点で1位、実技は教師と相討ちで3位。
そして、総合1位か。
よくやったな。」
やった!お父様から褒められたよ!
「はい、ありがとうございます!」
「実技は勝てなかったか…
もう少し厳しくしていればよかったな。
これからは……」
ん? バチストお兄様になに言い出してるの?
「お兄様、エリーの総合得点の方がお兄様が当時取った得点より高いでしょ。
もっと褒めてあげてください。
エリー、あなたも私と同じで筆記満点なのね!
流石、私の妹よね! 実技は私より高いしね!」
「そうだな。 エリー、よくやった!」
「エリー、やりましたね。」
「エリーは凄いな~。」
お姉様だけでなく、バチストお兄様含め3人のお兄様からも評価された!
「ありがとうございます!」
「後でお父様たちにも報告しておくわね!」
お母様もそう言い、とても喜んでくれている。
ここでお母様の言う『お父様』とはルシアス家前当主ルード・フォン・ルシアスである。
「いや、入学まではまだ少しある。それに、ルシアス伯爵には後日顔を出すと言ってあったのだから、直接報告しよう。
エリーからの直接の報告の方がルード殿も喜ぶだろうしな。」
それから入学までは、ルードお祖父様たちに会ったり、領地にいるルイスお祖父様たちに手紙を送ったりして、あっという間に過ぎていった。
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