第4話 お披露目会~ミリア~

「は、初めまして。

ミリア・フォン・ミライブです。」


自分と同い年の子に会うの今回が初めてだった。

だから余計に感情が昂ってしまったのだ。


「初めまして、ミリア様!

私はエレノア・フォン・ルミナリアです。

是非後ほどお話ししましょう! 」


「「エレノア」様」

お父様とリアナ先生から同時に声がかかった。


「はしゃぎすぎだ… 少し落ち着け」


お父様に睨まれた…

あ、つい…… ミリア様引いてないかな?


「ミライブ伯爵、ミリア様お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません。

同年代の方と話したことはもちろん、お会いしたこともありませんでしたので、つい…」


「いえいえ、大丈夫ですよ。

ミリアも同じ気持ちのようですし。」

ミライブ男爵がフォローしてくれた。


「私もお話したいと思ってたので、よろしくお願いします。」


私としてその返答はかなり嬉しいものである。


「是非ともお願いします。ミリア様。

いいですよね、お父様?」

「挨拶もこれで最後だ。

すぐに、食事が始まる。その時に話してくるといい。

うちの娘がすまないな、ロイド。」


「気にすることはない。

ミリアも友人がいなかったのだから。

そのために連れてきたようなものだしな。

とりあえず、挨拶もまだ終わっていないだろう?

一旦失礼するよ。」

ミライブ男爵はそう言って、席に戻っていった。



そうして、食事となった。


「 これからお食事をご用意します。」

食事はビュッフェ形式だ。コース料理が運ばれてくるパーティーもあるそうだが、その場合参加人数が増えると多くの人と話すことが出来ないという欠点もある。どちらかというと会議をしながらの食事であったり、参加人数の比較的少ないときに限られる。そのため今回はビュッフェ形式になっている。


「エリー、行ってきていいぞ。

ただ、他の人に話しかけられたときには礼儀を忘れないように。」

「はい、お父様。」


もちろん私はミリアの元へ一直線に向かった。

私の今の意識が覚醒する前の私を知っている人との関係は、何というかうまく言葉に出来ないけれど。英莉柰という人格の入る前の私と交流しているしているような気がしていた。

家族においても同様。いや家族はそれ以上かもしれない。彼らがここまで愛を費やし、育ててきたのは"私"ではない。今の状況は家族であるが、家族なのに本当のことを話せていないこの関係も何か歪な感じがずっと消えていなかった。

そんな私が初めて誰かと正しい関係を作れるような気がした。

友情なら今の私を知ってもらえる、見てもらえる。そんな気持ちでいっぱいだった。


「ミリア様、ご一緒してよろしいですか?」

「はい、喜んで。」


「お友達になったのですから、私のことはミリアと呼んでください。」

「わかりました、ミリア。

では、私のことはエリーでお願いします。

親しい方たちはエレノアではなく愛称でエリーと呼びますので。」

「もちろんですよ、エリー。」


お互い初めての友達だったこともあり、緊張もしたが、すぐに打ち解けた。

…が、話すネタがない!

訓練、勉強がほとんどのせいで何もない!

愚痴ぐらいしかない!

そういうわけで、お互いの訓練や勉強の話が進んでいったわけだ…


「やっぱりそうよね。

お兄様との訓練が大変なのはミリアも同じなのね。

私の場合だとバチストお兄様が厳しくて…」


「バチスト様のお話は私も伺ったことがあります。それに、先ほどこちらに来る際にお見かけしましたし。とても優秀な方だとか。

私は『騎士団の師団長の娘として恥ずかしくない程度には出来なければならない。』ってお父様方に言われていて。

それに剣術は入学試験でも科目の1つだものね。

そこで恥を晒すことだけは絶対に避けなくてはならないもの。

エリーも学院初等部の入学試験の勉強はしているのよね?」



王国には学院があり、学院は初等部、中等部、高等部からなる。クラス分けは入学試験で決まり、後は一年ごとにある試験の結果によって決まる。

クラスはAが一番上、そしてBCDと連なっている。

一番下が何クラスになるかはその年の入学者数次第らしい。例年はEぐらいまでらしいが。


貴族は必ず入学することになっており、また裕福な平民も多く通っている。

また、平民には寮も用意されている。規則上は貴族も寮に入居出来るがそんな物好きはほとんどいない。


初等部への入学は8歳になって初めての夏になる。

この国では夏にある建国記念日が一年の始まりだ。

そして、私たちが入学する日は建国記念日の次の日だ。

建国記念日には建国記念式典もあるのだがそれは高等部でからの参加なので今の私には関係ない。


今は春の終わりだから入学試験ももうすぐだ。

もう一ヶ月もないな。



「私は筆記は自信あるのだけれど、剣の方はあまり…

さっき話したけれどバチストお兄様にはまだまだ未熟すぎると言われているしね。」

私はそう答える。


「私からしたら筆記に自信があるのは羨ましいわ。

私は家柄的に剣の訓練が多かったから…

それもあって勉学はあまり出来ていなくて。

でもお互いAクラスを目指して頑張りましょうね!」

「勿論よ!ミリア。」


「ミリア」

「エリー」

お父様たちが私たちを呼びに来た。


そろそろパーティーも終わりなのでそのままミリアたちも帰っていった。



正直言って全範囲を履修できてさえ出来ていれば勉強に関してはどうとでもなる。計算とかは元から出来るし、初めてのものでもある程度は覚えられるから。

問題は剣術かな?


ミリアとAクラスになるって約束したんだから、頑張らなくては!

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