第110話 許嫁の喘ぎ声
*少し過激な描写が含まれております。
「莉音くん、マッサージしてください」
「は?」
6月になり、段々と気温も上がってきた日のこと、夕食とお風呂を済ませてリビングにいれば、結愛からはそんな声を掛けられた。
「ご飯もお風呂も用意して、今日はもう疲れました。なのでマッサージしてください」
ソファに座り無防備な体制で莉音を見る結愛は、無垢な表情を浮かべながら再度そう口にする。
「分かった分かった。する」
「ありがとうございます」
お風呂とご飯、さらにそれ以外も結愛に支えてもらっている莉音としては、結愛からのお願いを無視することなんて出来ない。
今はあまり早い時刻でもないし、明日は普通に学校があるので、すぐに行動に移そうとソファから立ち上がる。
「それで、どこでするんだ?」
「そうですね……。莉音くんの部屋か私の部屋、もしくはソファですかね」
「ソファで決定だな」
「即答ですか」
立ち上がってマッサージを行う場所を聞けば、消去法でソファしかなくなる。
別に莉音の部屋でもいいのだが、男の寝床に女子を連れ込むのは気が引けるし、結愛の部屋では理性を保てる自信がない。
そうなれば場所はリビングのソファしかなくなり、結愛もそれを理解したように頷いてみせた。
「じゃあ私はここに寝転ぶので、お願いしますね?」
「まかせろ」
結愛はそう言って、座っていた状態から横たわる。普段よりも露出度の高いルームウェアにドキリとしつつも、結愛の体を上から見下ろした。
(…………どこを触ればいいんだ?)
結愛の姿を見てから数秒、莉音の中ではそんな疑問が生まれた。
今の結愛は、とにかく目のやり場に困る格好をしていた。いつもならロング丈のネグリジェなんかを着て可愛らしい風貌を見せてくれるのだが、今日の結愛はやたらに色っぽかった。
ベビードールと呼ばれる、やたらに露出の高い服を着ていて、上からシースルーナイトガウンでも着ていなければ肩すら隠れない。
まあベビードールとは言ってもそこまで透けているわけではなく、ただいつもより全てが短かった。
ナイトガウンを着ているのである程度の露出は少しは抑えられるが、それでもいつもより見える面積が広いことに変わりはない。
普段は隠れている絶対領域も露わになっていて、莉音の目線はあちこちに泳ぐ。
全体的に白色が基調となった作りに、レースが付いているのでどこか清楚な雰囲気があるが、隠れることなく開かれたデコルテ部分が視界に入れば、そんな考えも消え去った。
流石に柔らかな物体によって生み出される谷までは見えていないものの、そこ付近まで見えてはいる。さらに薄い生地なので、いつもは隠れているそれも、普段より存在感を出していた。
(…………問題はそこじゃないんだよな)
とまあ今のは結愛がソファに座っていた時の話で、横たわればまた話は変わってくる。
乳白色な肌をした細い肢体は、ちょっとした仕草で服の内側をチラリと見せる。
上半身はまだナイトガウンによってその背中を隠しているから良いものの、下半身はそうもいかない。
足の付け根や、その付近にある勾配の高い柔らかなものは、意識せずとも視線が向いてしまう。スカートの内側にある、ほんの少しめくれてしまえば見えそうなそれは、見えてはいなくとも莉音の理性を大幅に削った。
「莉音くん?どうかしましたか?」
「い、いや……なんでもない。そろそろ始めるぞ」
「はい。優しくしてくださいね?」
「その言い方はやめてくれ」
莉音があまりにも遅いからか、結愛は振り返って声を発する。
その言葉でギリギリ正気を戻した莉音は、際どい所は触りすぎないように、細心の注意を払いながらも、結愛の柔肌に触れた。
「ひゃっ!」
莉音が結愛の腿に触れれば、先に声を上げたのは結愛だった。どこか甲高い、甘い肉声をあげ、開いた手の平でソファをきゅっと掴んだ。
「え、あっ、あ、、、り、莉音くん、?」
突然触れられたことに驚いたのか、結愛は頬を染てゆっくりとまた莉音の方へと振り返る。その表情が色香に溢れているのは、今の服装も相まってだろう。
「お客さん、どうですかね」
振り向いた結愛の顔を見ながらも、莉音はマッサージを続ける。
「そ、その……想像よりも、、、きゃっ!」
結愛はびくんっと体を震わせながら、また艶のある声を上げる。莉音が少し力を込めれば、結愛もそれに強く反応した。
「んっ、な、なんか、手つきがやたらと……」
「やたらと?」
「優しいようでいやらしいというか、、、」
「そりゃマッサージだからな。多少は許してくれ。心配しなくとも、変な所は触らないよ」
「……それは分かってます、けど、」
結愛の体をなぞるようにそっと指先で触れ、力を入れすぎないように凝ってそうな場所を揉む。
腿ですら本気で力を込めれば折れそうなほどなのだから、結愛の体が華奢だということを改めて認識させられる。
「やっ、、そこは、、、ひゃっ!」
「静かにしてくれないとマッサージ出来ないんだが…………。結愛からお願いしてきたんだから、少しは我慢してくれ」
「わ、分かりました」
声を出すと集中出来ないというのもそうだが、今の結愛はおそらくだが自分の服装のことをすっかりと忘れている。
ちょっと動けばスカートの内側が見えそうなのは変わらない。それでいてさっきよりも足に力が入っているのは、莉音の指が触れることに緊張し始めたからか。
「うぅ、、、あっ!」
その後も腕やら腰やらのマッサージを行うのだが、結愛は莉音の言われた通りに声を抑えようと努力していた。
なるべく口を閉ざし、そして口の上に手を当てて、漏れ出た声が響きがないようにする。
だがそれで完璧に声を塞ぎ切れるはずもなく、声が出るのを我慢させながらも口籠った
時折髪の間から頸が見えるのだが、それがまた
「あ、あの…………な、な、なんでそんなに上手いんですか?」
莉音が少し休憩とちょっと手を止めた隙に、結愛はそう尋ねた。結愛の少し乱れた服装に居心地の悪さを感じるのは、青少年なら当然とも言える。
おまけに潤いのある瞳に上擦った声をしているのだから、男なら胸の中に好色の想いがそそるだろう。
「ん?まあ俺もちょっと前までは料理とかお風呂とか用意してたし?大体どの辺に疲れが溜まるかは分かるんだよな」
「そんなぁ」
何かに期待していたかの顔をする結愛は、染まった頬を隠しもせずに目線を下げた。
「こことか割と疲労が溜まるっぽいぞ」
「きゃっ、」
莉音が不意に腰を触れたら、男の情欲を掻き立てる妖艶な表情とともに、結愛は高音を響かせた。瞳はさらにうるうると滲み、行き場のない手は莉音の服をきゅっと掴んだ。
「…………何というか、結愛って結構全身が弱いよな。少し触られただけで、こんなに顔赤くしてるし」
「り、莉音くんによってこうされました」
「人聞きの悪い事言うな」
「事実です、もん」
結愛はソファから横たわった体を起こし、若干の乱れた服を直しながら座る。莉音も結愛が座ったのを確認してから隣に腰を下ろし、ふぅと息を吐いた。
「ったく、耳まで真っ赤にして、」
「あ、あの耳はやめてください……」
隣に座った結愛の顔を見て見ていれば、髪に隠れつつも赤く染まった耳が莉音の視界に入る。それを揶揄うように触れてみれば、結愛は目を細くし、しゅんと縮こまった。
「そこは他の場所よりも、ちょっとだけ、敏感なので……触るのはダメ、です」
結愛は初々しい照れた表情を露わにし、その潤いからか、蒼い瞳を揺らした。
「ひゃっ!…………や、やめてって言ったのに!」
「そう言われるとつい触りたくなって……ごめん」
「うぅ…………いじわるっ」
少し唇を尖らせている結愛だが、莉音の行動にお叱りはない。そうも簡単に許されると莉音としては罪悪感を覚える。
まあそのいじらしい顔を見てしまえば、罪悪感なんて忘れてしまうのだが。
「お、女の子だって……、やられたままではいません、よ?」
そう口を開く結愛は、手を伸ばして莉音の頭を触れる。どこか包容力のある顔を浮かべ、柔らかな笑みを浮かべる。
「今度は私が、莉音くんを癒してあげます、ね?」
そしてそのまま、結愛の開いたデコルテ部分に、莉音の顔は埋められる。ここから結愛からの反撃が、静かに始まるのだった。
【あとがき】
・ベビードールと言っても、そこまで過激なものじゃありません。特別透けているわけでないです。ただスカートが短いだけです。今回は。
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