番外編 莉音と結愛の友達たち①

「しかし、花森さんもお優しいこった」

「何のことだか分かりませーん」



 莉音と結愛を残して飲み物を買いに行った美鈴と修馬は、2人でそんな会話をしながら自販機まで向かう。




「白咲さんと莉音のためでしょ。わざわざ俺と飲み物を買いに行ったの」

「…………まあそうなるのかなぁー」



 修馬が具体的に指摘をすれば、美鈴は少しだけとぼけた様子を見せながら声を発した。



 

「霧中くんも結構凄いけどね。あの一瞬でそこまで読み取るの」

「いや見てれば分かるよ。あれは」

「ははは、確かにそうだね」



 修馬からすれば、莉音と結愛を2人きりにするために美鈴が飲み物を買いに行くと名乗り出たのは分かっているので、美鈴からの提案に乗るしかなかった。



 どちらにせよ修馬もチャンスがあれば2人きりにしてあげたいとは思っていたので、美鈴には感謝していた。




「なんだか結愛ちゃん達の背中見てたら押したくなっちゃって」

「気持ちは分かる」



 あの誰とも親しくなろうとしなかった親切な莉音が、気を許した人物だ。

 それを修馬が後ろから押したくないわけがない。




「…………最初は八幡くんも下心で結愛ちゃんに近付いてると思ったけど、そんなこと全然なかったしなぁ」

「ふーん。女子から見たら相手が莉音でもそう思うんだ」

「最初はだよ。でも今は全然。むしろ下心あった方がいいんじゃないのってレベルだよ」

「はは。確かにそうだよな」



 美鈴と修馬はお互いに笑って話しながら、莉音のことを評価する。

 



「だからちょっとだけど、2人きりにしてみた」

「あの2人は家でも2人きりだから、大した変わらないかもだけどね」

「あ、そういえばそうだった」



 そして後押ししたことを思い出すように口を開いた美鈴は、その後にちょっとだけ寂しそうな顔をした。




「…………こんなこと、結愛ちゃん達からすれば余計なお節介なのかもしれないけどね」

「花森さん?」



 その口調に明るさはなく、自分の行動に対して悲しさすら感じさせてくる。

 もしかしたら、美鈴は過去に何かあったのかもしれない。



 必要以上の世話を焼いて、誰かに迷惑と言われた、とか。




「私、昔から余計なお節介をよく焼いちゃうらしいから、、、」



 修馬の予想は当たり、美鈴は顔に出た悲しいオーラを隠すように優しい笑みを浮かべた。




「…………俺は花森さんのそういう気遣い、割と好きだけどな」

「え、」



 修馬の言葉を耳に通した美鈴は、はっと驚いたように口を開けた。

 美鈴は肩まで伸びた髪を揺らし、下を向いて前髪で目元を隠す。




「…………きもい、」



 次に美鈴の口から出てきた言葉はそれだった。




「え、えぇ……。俺は思ったことを言っただけで」

「いきなり何言っての!き、きもすぎ!」



 本音を述べた修馬からすれば突然の罵倒に困惑するが、それでもその言葉にはどこか嬉しさが混ざっているような気がした。




「…………罰として、ジュースは霧中くんの奢りね」

「何で…………まあいいけど」



 これまで友達の友達という関係だった2人の距離は、ほんの少しだけだが、近くなるのだった。






【あとがき】


・②が来る日があるのかな?わくわく。


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