第3話

 ミツバチは恐ろしくなって、周辺の調査を大急ぎで済ませ森に帰りました。みんなは心配そうな顔で待っていてくれました。全員のお礼の言葉で、使命の重さが十分わかりました。みんなへは次のような事を報告しました。流れて来た水の汚れはキャンプ場からのもので、河原で料理する時に出るということ。そしてなぞの物体は、その時に使われる材料を入れる物だったり、飲み物の容器であること。またハエや蚊に聞くところによると、人間が花火で遊んだ後のゴミでもあるとのこと。

 それから川の途中にはまだそれらがいっぱい流れていて、こちらに向かって進んでいるということも付け加えられましたし、対策の為に水門をもっと強化しなければならないと、熊の親子に頼まれたことも伝えました。


 「あの水門は山から流れてくる木の枝や、葉っぱなんかには十分耐えられるものだったんじゃが、何であれではダメなんじゃろう。」

 「アッシの経験ではおそらく人間の出すゴミが、水門の付近で溜まってしまうからだと思いますぜ。それがダムのようになって一気に流れると、湖の方向に溢れるってあんばいに・・・。

ありがたいことに、番人親子のお陰でまだ水門をくぐって来たものは、ほんのちょっとで済んでやすが、どっと来ないうちに何とかしなけりゃぁいけませんぜ。」

 「なるほど、よーくわかった。みんな、水門の強化だ!それと、汚れた水が来ても水門を越えて湖に入らせないで、下流へ流れやすくなるように川をもっと広げよう。」

 ビーバーの親方の説明にみんなが納得しましたが、その意見とはまた違った意見の持ち主もいました。

 「わたくしペルーシャは、水門の強化も大切だとは思いますけれど、それ以前に人間にモラルの大切さを教えなくてはと思いますわ。だってそうでしょう。いくら水門を強化したってゴミをどんどん出されたら、いつまでたっても汚染の原因は消えないんですからね。肝心なのはモラルですわよモラル、モラル!」

 さすがに外国に暮していただけの事があるようですね。得意げなおばさんを、からかってやろうと思ってミツバチが言いました。   

 「そう言えば帰る時に、川に向かってオシッコをしている人間の親子を見かけたよ。」

 それを聞くとおばさんは顔を真っ赤にして

「何とお下品で、何てはしたない。モラルの低下もはなはだしーぃ・・・」

 と叫ぶと、気絶してしまいました。



 おばさんを静かに寝かせた後、みんなはどうすればいいかを考えました。水門の強化は勿論のことでしたが、やはり人間にモラルの大切さを訴えなければなりません。

 「この森で私たちが、水をきれいに保つためにしていることを伝えるのはどうでしょう。たとえば、木の葉の食器を洗う時はAの川、お風呂に入る時はBの川、顔を洗う時は湖の一番はずれと、決まっているじゃありませんか。」

 「そうだ。その為にみんなで苦労して、何本もの川を引いたんだからな」

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