2-3
扉閉まり、足音が遠ざかって行くのを聞いてから、ウィッドはグロウリィーに色々なことを聴いた。
一番最初に聴いたのはモンクサーのことで、彼の本名は『モンクサー・ヘル』と言うらしく、
ドラゴンが好き過ぎるあまり、ドラゴン騎士団というドラゴンを操り戦う騎士団なのだが、それに若くして入ると、恐るべき速さで昇進して行き、今や団長だという。そして魔王軍幹部でもあると語るのだから彼の凄さに驚きを隠せなかった。そんなすごい彼がグロウリィーに対して様を付けており、二人の間柄が少し気になった。
グロウリィーは「僕を見た時のあの反応をするのは多分、僕の目が好きだからだと思うよ」と言った。
「君の目?」
よく見ると瞳孔が丸ではなくひし形で上下が尖っているし、相変わらずエメラルドの透き通る様な深みのある緑色だ。
「あいつが、ああ‼︎なんて美しい瞳でしょう! てペットのドラゴンみて騒いでたの聞いた事あるからな」
ウィッドはモンクサーの真似をする彼をみて笑ってしまう。それを見たグロウリィーは一瞬固まったかと思うとそのあとすぐに目が据わってしまったので、この可笑しさを腹の中に収め、話題を変えた。
「そ、そういえばさ。赤色って何か意味があるのか? ここに来てからずっと見かけてさ、気になってたんだ」
と言うとグロウリィーは視線を前の何かに向け、答えた。
「……魔界での赤色は、幸せや幸運なんかの意味が込められてる」
彼は鮮やかなカーペットに視線を向けゆっくりと続けた。
「普段からこんな風に、町中が赤色なわけじゃない。こんなに真っ赤になるのは……」
二、三回ゆっくりと瞬きをすると深く息を吸った。
「魔王族の結婚式の時だけ」
視線はデーブルクロスの上にある白色の花瓶に入った薔薇を見つめていた。その薔薇もこの上なく鮮やかな赤色であった。
横から見る彼の睫毛は微かに震え、眉間には皺を寄せている。自分はどうしてこれほど会話が下手なのかと疑問に思う。それでもこの口は話すことをやめられないらしい。気づけば気まずい状況をなんとかしようと口が動いていた。
「魔門、てやつ。見てみたいんだけど」
「そうだな」
と言って立ち上がった。ウィッドは不思議と自分の口角が少し上がっていることに気づいた。彼の気持ちの方向が違う方に少し傾いてくれてよかった。
「変態バカの言うとうり調べてみるか」
「そいじゃいこ!」
城の中央に位置する部屋に魔門はあった。その門は大きく、縁の模様は細かやかで美しい。門の上には水晶がはめてあったがモンクサーが言っていたとうりヒビが入り破れていた。グロウリィーが試しに魔力を流し込んでみるが全くもって反応なし。ウィッドが自分もやってみると言ったがグロウリィーにやめておけと止められた。
「魔界と天界じゃ魔力の流れが違う。変態バカの使える力は神力であって、僕が使えるのは魔力。これは魔力で動くように作られてるから、意味ないよ」
「えっ、そうなのか」
しばらく魔門の辺りをうろうろし、観察してみたのだがこれと言った異常は水晶が破れているくらいで、それも誰かが破ったような痕跡はない。
門の正面に立ち、水晶を眺めているグロウリィーにウィッドは曲げていた腰を上げ、ふらふらと歩いて近づく。
「俺、帰れないのかなぁ」
「……いや、帰れないことはない。水晶を修復……」
言い終わらないうちにウィッドは「ほ! 本当か!」と食い込んだ。
「……だけど」
上げていた顔をこちらに向けると、目が合う。
「だけど。少なくともその方法だと四ヶ月以上かかる」
四ヶ月。普通なら百年たとうが、一千年たとうが全く何も思わないのだが。今、自分が四ヶ月という時間が長いと感じてしまうのは、彼の父。ブライダルが原因でだった。
今までも何日か宮殿にいないことはあったが一ヶ月も何も言わず何処かに行くことはしなかった。ブライダルは過保護にプラスして暴君なため。もしも自分が
「……」
自然と視線が下を向き、拳を握りしめる。
「……修復すると。て話をしたんだけど? 新しいのに魔力込めて嵌め込むなら、1日くらいだよ」
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