2-2

城の中をモンクサーに案内される。案内されている間、二人とも本題に入らず世間話やら部屋の説明やらをしていた。と言っても一方的にモンクサーがグロウリィーに話題を持ちかけているのだが……。

 ウィッドはそれを黙って後ろから聞いていたが妙な既視感を覚えた。

 グロウリィーのローブ。

 町の灯り。

 城の至る所にまるで、これ以外は道ではないかというようなくらい張り巡らされた長いカーペット。

 それら全てが血の様に赤く、余るほどの鮮やかさは攻撃的なものであった。

(魔界の者は赤が好きなのか?)

 色々考えていたら目がチカチカしてきたが、モンクサーが本題に触れてくれた。

「それで、私のことが苦手なのにどうしてここに来たのです?」

「魔門」とだけしか彼は言わなかったが、多くを語らずともモンクサーには彼が何を言いたいのか理解できる様だった。

「ああ、それなんですけどね……と、続きは客間で話しましょう」

 他より少し凝った装飾のしてある扉の前で足を止る。客間と呼ばれたその部屋の扉は滑らかに動き、部屋の中を魅せる。

(ここにも赤いカーペット。それにデーブルクロスも赤だ)

 ウィッドとグロウリィーはモンクサーと対面になり、赤と茶色の木組みの派手な椅子に腰掛けた。

「それで? なに」

「えっと、魔門の話でしたね。実はですね昨日、私がうっかり壊しちゃいました☆」

「馬鹿を言え」と言ってきつく睨むと、モンクサーは笑いながら。

「嘘ですよ。そんなに怒らないでください。本当は昨日いきなり水晶が破れてしまったんです」

「破れた?昨日?」

「はい」

 信じられないと言う様子で彼はモンクサーを見つめる。何故か? 基本的に魔門に使われる水晶が破れるなど滅多にないことだからだ。

 天界と魔界を繋ぐために最も重要な部分なのだから丈夫な物が選ばれる。さらにそれを魔門にはめる前に魔力で強化するため、破れることは滅多にない。

 

「原因は?」

「……んーあるとしたら二つですかね」

 二本の指を立てて真剣な顔をすると一つ目。と始めた。

 水晶の寿命が来た。どんなに強化をしようがどんなに質が良かろうがいずれ寿命が来ると言うことだ。

 二つ目が天界側が何かしたか。とモンクサーは言った。それに付け加えてこちらの方が面倒だと言った。

「何かしたってなにを?」

 具体的なことを聞こうと質問をしたがモンクサーが答えを言おうと口を開いたところで扉からノックの音が響いた。

 続いて彼の名を呼ぶ者が「大変失礼します。モンクサー様。すぐにお願いします」と、どうやら急ぎの用事のようだ。

 モンクサーはグロウリィーに深くお辞儀をすると。

「すみません。また後ですね。魔門はどうぞ勝手に見てもらっていいですよ」

 外に出て行こうとしたとき、閉まりそうになった客間の扉を片手で抑え。何を思ったのか一言。

「んー忘れてしまいましたね」

 再度名を呼ばれ、意味不明な独り言を残し、あのいやらしい笑みを浮かべてわ、ゆっくりと扉を閉めて出ていった。


「モンクサー様。あの方のことをグロウリィーと呼んでいらっしゃいましたよね。報告させましょうか?」

「……」

 黙って何かを考えるモンクサーをみてまた名を呼ぶと、彼は答えた。

「……誰にです?」

「あのお方にです」

「あのお方が彼を探していたのですか?」

「はい、ご存じではないのですか?」

 モンクサーは考える素振りを見せた後、少し唸り、忘れてしまいました。と首を横に振った。

「だめですねぇ。私」

 頬に自分の手を置いてため息を吐く。

「それより、私を呼んだ用はこれくらいですか?」

 と、笑って言うと下僕は慌て、違いますと否定をし、そして改めて用事を伝えた。

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