39. 小説家さんと誕生日(前編)
39. 小説家さんと誕生日(前編)
今日は待ちに待った真白さんの誕生日。時間は7時40分。約束の8時までもう少し……。真白さんは今日一日オレの部屋で過ごす……そう考えると、なんだか緊張してきたな……。
何とか真白さんにあげる誕生日プレゼントも買ったし。喜んでくれるといいんだけど……。少しの気休めにしかならないが、脳内で真白さんの喜ぶ顔をイメージトレーニングを何度もした。大丈夫。問題はないはず。
そして8時。インターホンが鳴り、真白さんが部屋にやってくる。
「おはようございます北山さん。今日はワガママ言ってすいません。よろしくお願いします」
「あっはい。おはようございます。真白さん。その誕生日おめでとうございます」
「あっ……ありがとうございます」
しまった……なんか訳のわからないタイミングで言ってしまった……落ち着けオレ!冷静になれ!真白さんが目の前にいるんだぞ!?深呼吸して気持ちを整える。よしっ……よしっ!! 平常心だ!!
「とりあえず、オレは執筆しているので真白さんはお好きにどうぞ」
「あ……はい……」
部屋に入った瞬間、キョロキョロしていた真白さんだが、すぐに大人しくなってベッドに座ってくれた。
執筆をしながらチラッと真白さんを見る。やっぱり可愛い……って違う違う。執筆に集中しろオレ!
「あの北山さん?」
「はい!なんですか?」
「朝ごはん作りますね?まだ食べてないですよね?」
それは凄く嬉しいけど……でも、誕生日の真白さんになんか申し訳ない気がする。そして真白さんは朝食を作ってくれたあと、いつものようにアパートの前の掃き掃除とこの前作った花壇の手入れをすると言って部屋を出ていった。
「はぁ。オレ……何やってんだ……」
せっかくの真白さんの誕生日なのに、オレは結局真白さんに何もしてあげられていないじゃないか……。
真白さんが部屋から出ていった後、オレは執筆の手を止めていた。このままではダメだと分かっていても、何も行動出来ない自分が情けなかった。
「本当に……こんなんで擬似カップルじゃなくて、本当に真白さんと付き合いたいって思うのは我ながら図々しいよな……」
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