20. 管理人さんとまた

20. 管理人さんとまた




 私の左手の温度がヤバいくらい熱い。これは私の体温?それとも北山さんの?でもその熱を感じているのも幸せに感じる。これがデートなんだ。


 しばらく水族館を見て回り、この水族館の目玉である大水槽の前に辿り着く。その大水槽には色んな魚たちが泳いでいて。とても幻想的な空間にいるかのような錯覚さえ覚える。


「わぁ……綺麗」


 一面に広がる海の世界。本当に綺麗だなぁ。


「真白さんの言う通りだね。すごく綺麗だよ」


「ふぇっ!?」


 はい!?今綺麗って……あっ水槽か。


「え?どうしたの?」


「い、いえ……私のことかと

 思っちゃって……あはは」


 うぅ。恥ずかしい……。いきなり綺麗なんて北山さんが言うわけないじゃない。もう……。そして、そのあとも水族館の色々な場所を見て回り楽しんだ。その間、ずっと北山さんと手を繋いだままだった。


 そして帰り道。もう辺りは薄暗くなっていた。何も言わず歩いている。もうデートが終わっちゃうのか……。そんな気持ちになり、無意識に繋いだ手を少し強く握りしめる。まだ終わりたくない……そんな感情だけが私に溢れてくる。


「あの……真白さん。今日はありがとうございました。」


「こちらこそです……とても楽しい時間でした……」


「恥ずかしい話なんですが、オレはデートしたことなくて……だから、緊張して上手く出来てないかもしれないけど……」


 え?初めて……?北山さんも今まで誰ともお付き合いしたことないの?なら、今日のデートも手を繋ぐのも……私が初めて?それを聞いてすごい嬉しくなる。私は笑顔で答える。


「いえ、北山さんはちゃんとしてくれてますよ。それに私もデートは初めてですし……。でも、こうして一緒に歩くだけでも幸せな気持ちになれるから大丈夫……!」


 本当に北山さんと一緒にいるだけで私はすごく幸せだ。そして名残惜しいけどアパートに着く。


「今日は本当にありがとう。真白さん。」


「お礼を言うのはわたしの方ですよ!……こんなにも素敵な思い出が出来たのは、全部北山さんのおかげですから。」


 私が家の中に入ろうとした時、北山さんが言った。


「あの……真白さんさえ良ければだけど……また一緒に出かけませんか?」


 北山さんの真剣な目。これは本当に擬似カップルだから誘ってくれているの?と疑いたくなる……。でも私は北山さんと一緒にいたいから……。


「……はい、喜んで。」


 私がそう伝えると北山さんは嬉しそうに部屋に戻っていったような気がした。そして今まで握っていた左手に残る北山さんの熱を感じながら……


「やっぱりダメだ。私は北山さんが好き。大好き。本当に本当に大好き。だから……これからもよろしくお願いします……」

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