21. 小説家さんと本当の

21. 小説家さんと本当の




 オレは今、近所のコンビニで買い物をした帰りだ。


「また大量のカップ麺を買ってしまったな。真白さんに怒られるかもな」


 ……そういえば、今日は朝から会ってない気がする。どことなく寂しいな。本当に毎日一緒にいたいくらいだしな。


 でも、真白さんと擬似カップルとして付き合い始めたからといって、別にイチャイチャしているわけじゃない。


 真白さんはオレの恋愛小説を完成させるために手伝ってくれているだけだ。一線は越えてはいけない。もちろんオレの方が年上だし、そこは理解している。


「……ん? あれは……真白さん?」


 アパートの前に差し掛かった時、目の前に見覚えのある後ろ姿があった。


「真白さん。こんにちは」


「ひゃっ!?……あ、北山さん!」


 声をかけた途端、驚いたように肩をビクッとさせて振り向いた真白さんは笑顔を見せる。その手には買い物袋が握られていた。


「どうしたんですか?こんなところで」


「えっと……お夕飯の材料を買いに行ってました……」


 恥ずかしげに頬を赤く染める真白さんはもじもじしながら言う。


「それなら良かったです。今日は会えないと思っていたんで。顔を見れて良かったです。」


「え……?私……ですか?」


 すると、真白さんの表情が一変した。先程まで赤かった頬はさらに紅潮し、視線をキョロキョロさせている。そして、何かを言い淀むようにして口を開いた。


「その……わたし……北山さんとお話したくて……」


「え?オレとですか?」


 モジモジさせながらチラリとこちらを見てくる真白さん。その様子は小動物みたいだった。ヤバい可愛いすぎだろ!


「あの。良かったら今日お夕飯また一緒にどうですか?ほら……またカップ麺みたいですし?」


「そ、それは嬉しい提案ですね……。じゃあ是非お願いします」


「はい。それじゃ今日は北山さんの部屋で作りましょう」


 花のような笑みを浮かべて返事をする真白さんを見て、思わずドキッとした。やっぱりこの人……めっちゃ可愛いよなぁ……。


 ん?オレの部屋!?


「あのオレの部屋汚いですけど大丈夫ですか?」


「全然平気ですよ?……せっかくなのでお掃除もしちゃいましょうか。」


 その真白さんの言葉を聞いてオレは自然と言葉が出てしまっていた。


「なんか、本当に付き合っているみたいですよね?それ」


「ふぇ!?……そ、そう……ですね……」


「……あっ、ごめんなさい。変なこと言って。さっきから真白さんの反応が可愛すぎてつい……」


 やべぇ。完全に無意識だったわ。これじゃまるで彼氏みたいなこと言っちまったぞ。おっさんが何言ってんだよ……。流石に気持ち悪かったかな……。うぅ……やってしまった……。

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