13. 小説家さんとカレー

 13. 小説家さんとカレー




 オレが悠理と約束した期限まで残り2日。5000文字を書くことはあまり苦ではないが、正直この前のものと何も変わらないような気がする。


「ふぅ。どうしたものかな……」


 そんなことを呟きながら机に突っ伏していると、スマホにメッセージが届く。相手は真白さんだ。『北山さん、良かったら今から私の家に来てもらえませんか?』という旨の内容だった。


 これは……もしかしてお誘いってやつなのか? もしそうなら断る理由なんてない! 真白さんの家に行ってイチャイチャしたい!……という願望はおいておこう。


 とりあえずオレはそのまま真白さんの部屋に行く。


「あっ北山さん。」


「どうかしましたか真白さん?」


「一緒に夕飯食べませんか?北山さんどうせカップ麺ですよね?ダメですよ、ちゃんとご飯たべないと」


「ははっ。お恥ずかしい限りで」


 うーん。確かに言われてみれば今日はまだ昼以外なにも口にしていないかもしれない。……よし、せっかくのご好意を無駄には出来ないしな。


「せっかくなのでお言葉に甘えて」


「どうぞどうぞ」


 オレは真白さんの部屋に入る。大丈夫か?おっさんが若い娘の部屋に入るんだぞ?……まぁいいや。もう入ってるし。


 するとすぐオレの視界に真白さんが干したであろう下着類が目に入った。もちろんそれをじっくり見るわけでもなく、さっと目を逸らす。


「あっ!その見ないでください!まだ乾いてなくて……ちょっと移動させてきます」


「すっすみません!」


 お互いに顔を赤くして気まずくなる。なんとも言えない空気の中、オレは料理をする真白さんの後ろ姿を眺めていた。


「はい、出来ましたよ〜。」


「カレーですか?すごく美味しそうだ」


「残りはタッパーにいれておきますから、明日も食べれますよ?あっでもまだ食べてないし美味しくなかったら迷惑ですよね?」


「いえいえとんでもないです!ありがとうございます!」


 すごくいい子だなぁ。こんな子が彼女になってくれたらいいなぁ……。そんなことを考えていると、真白さんが口を開いた。


「小説の執筆順調ですか?」


「思ったものは書けてないですね。やっぱり恋愛物は難しい」


「気になったんですけど?なんで恋愛物を書こうと?」


「えっと……正直に言います。真白さんと出会ったからですよ。」


「わっわたし!?︎」


「はい。どうしても書いてみたかった。オレにとっての初めて書く恋愛小説は真白さんのような素敵な女性の恋物語にしたかったんです……あっ」


 ヤバい……気持ち悪かったかな?こんなおっさんが。これじゃあただの変人じゃないか。そう思っていると真白さんは優しく微笑みながら言ってくれた。


「嬉しいです……ありがとうございます北山さん。」


 そして夕飯をご馳走になり、再び家に戻り執筆作業に取り掛かる。


「めちゃめちゃ可愛いかった……それに明日も真白さんのカレーが食べれるなんて幸せ者だよなオレは。さぁ頑張らないとな!」

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