7. 小説家さんと編集さん

7. 小説家さんと編集さん




 オレはそのまま真白さんをイメージしたヒロイン像の恋愛小説を書き始めている。


「とりあえずこんなものか。あとはこれをアイツに読んでもらって……ふぅ。休憩するか」


 そんな時、オレの携帯電話が鳴る。画面を見ればそこには【悠理】の文字が表示されていた。オレは通話ボタンを押し、電話に出る。


「もしもし」


 《あっ晴斗?今どこにいるの?》


「どこって家だけど?」


 《ちょうど良かった。今新しいアパートの前にいるんだけどさ?晴斗の部屋って何号室?》


「は?なんでもう来てるんだよ!まだ書き終えてねぇって!」


 この電話の女性は霧島悠理。オレのデビューの時からの担当編集だ。


 《はぁ?あんたが新しい小説を確認してほしいって言ったんじゃない?それで部屋番号は?》


 《あの?もしかして北山さんのお知り合いですか?北山さんなら202号室ですよ。案内しますね》


「えっその声は真白さん?」


 《ありがとうございます。それじゃ晴斗、今行くから》


 そう言われて、電話を切られた。そして、インターホンが鳴り響き、玄関を開ける。


「さっさと開けなさいよ。」


「お前、夕方からの約束だろ?」


 くそっ……せっかく真白さんが目の前にいるのによ……


「あの……その女性は北山さんの彼女さんですか?」


「あっこいつは……」


「彼女みたいなもんでしょ!昔から知ってるんだし、ほら早く中にいれなさい。あっ管理人さん、ありがとう」


「悠理!オレたちはそんな関係じゃ……」


「!?悠理……名前呼び捨て……あのあの……失礼します!」


 そう言って真白さんは走って行ってしまった。ああ……完全に誤解された……。


「ん?どしたの晴斗?」


「なんでこんなことに……もう終わりだ。オレのハッピーライフが……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る