墓地解放

 農村に入ってまもなく、空を飛ぶ例の黒衣の魔術師を見かけた。

(発見された)

 魔術師はこちらを発見してまもなく、その顔に笑みが浮かんだ。

 邪悪な笑みだ。

 また竜でも使って殺す気なのかと、不気味に思う。

 せっかく時間をかけて移動したのに、山荘にまで戻されるのは御免ごめんだった。

 魔術師が、例の紫色の魔法を、墓地に向けて放っていた。

(まさか?)

 大した時間もかからず、墓地から死体が、正確には骸骨がいこつたちが出現する。墓石のほとんどからだ。

 墓石の周辺が血の染みで赤く染まる。

 埋められていたはずの死体の肉は完全に落とされ、白骨の姿で動き回る。

 足が自然と早くなり、骸骨に追いかけられながら松明の家へと駆け込んだ。

 ドアを開けて入り、簡素なのドアを即座に閉める。

 間一髪、間に合ったようだ。

 それでも不気味なので、骸骨たちが叩いているドアからはすぐに離れ、建物内を確認する。

 この家に招かれるべきは、自分か骸骨どちらなのか。

 それはわからない。

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