回帰

 気がつくと、山荘の手記の前に立っていた。

 戻ったのだろうと把握するには、しばらく時間がかかったが。

 手記を読み返す。


"松明のある場所は目印だ。

 もし意に沿わない眠りについたときは、そこから始め直すことができる。"


 つまりこの世界で死んでしまうと、松明のある建物などに戻されるらしい。

 あの白骨化した竜に飲み込まれたのだ。

 建物の中が安全なようだが、このまま居続けても意味は無いだろう。

 月明かりの下、慎重にふもとを目指すことにした。

 外を見ると、月に照らされている漆黒の天空を、白骨の竜が舞っていた。

 何処いずこに飛ぶのか、それはわからない。

 おそらく、時間は巻き戻っていない。

 戻るのは、命だけらしかった。

 今まで来た道を戻る気はなかった。

 別の方角から、とにかく戻るしかない。

 次の松明を目標に。そう思い、歩き始めた。

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