山荘の手記

 リビングらしき部屋。

 立派な外観とは違い、内装はずいぶんとくすんでいた。

 いたるところに蜘蛛の巣があり、ホコリの汚れやサビなどが散見された。 

 匂いも、お世辞にも生活感があるとはいえない。

 リビングらしき部屋には、一冊の、くすんでぼろぼろのノートが置かれていた。

 表題には、『山荘の手記』と書かれている。

 無断で読んでいいかは分からないが、この山荘や周辺の地域を知る手がかりにはなるだろうと思い、開いて読んでみる。

 その手記には、こう書かれていた。


"起きてもいいし、そのまま寝ていても良い。

 ただし、一度でも自分から起きれば、二度とここへは戻れない。"


 やはり意味はよくわからないが、あまり良い気分にはならなかった。

 こう続く。


"松明のある場所は目印だ。

 もし意に沿わない眠りについたときは、そこから始め直すことができる。"


 意味がわからなかったが、この山荘の入口の松明を思い出すくらいしかなかった。

 続きは短く、こうあった。


"グッド・ナイト"


 特に手がかりらしい手がかりもない。

 この夜は、ずっと明けないままなのかもしれない。

 なんとなく、そう思ってしまった。

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