山の明かり

 道なき道を延々と歩いていると、火によるものと思われる明かりが近づいているのが目に入った。

 自分以外の誰か、人間が居るのかもしれないと思うと、自然と足が早くなった。

 坂を登りきったのか、開いて平坦な地面になった部分を歩む。

 目的は、もちろん明かりの差す方向だった。

 霞が晴れていくと、見えたのは山荘だった。

 屋敷というほどではないが、そう小さくもない家のような木組みの小屋だ。

 表のドアの前には、松明たいまつが2本差し込まれている。

 きっと、誰かが居るのだろう。そう思い、近づいてノックをする。

 しばし待ち、何度かノックを繰り返すが、返事はない。

 真夜中、だからかもしれない。何時なのかはわからなかったが。

(そういえば、眠くないな)

 気づいたが、無視をする。

 意を決して、ドアを引いて開けてみる。

 カビの匂いが鼻孔をくすぐった。お世辞にも掃除が行き届いているようではなさそうだ。

 挨拶をしながら、玄関をくぐる。

 松明はあるというのに、人の気配はない。

 よく確認しなければならないだろう。

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