第4話 『前を向くって難しいな』
雅先輩を家まで送り終え、幸せな気分に満たされたままの状態で、和哉にメッセージを送る。こんなにも幸せな思いを出来ているのは、やっぱり、彼の協力が大きかった。御代のことは俺が頼んだにしても、雅先輩に関しては完全に和哉の独断での判断だ。
『雅先輩に俺の家教えたんだって?』
『迷惑だったか?』
『そんなことないさ。久しぶりに先輩と話せて楽しかった。ありがとう』
和哉には俺が雅先輩に対して好意を抱いていることを教えていない。しかし、付き合いの長い和哉は俺の気持ちに気づいていて、雅先輩に俺の家を教えたのかもしれない──この際どっちでもいいさ。
『それなら良かった。明日部活に来るんだよな?』
『あぁ、もちろん』
『文化祭用の小説は書けそうか?』
『それなら、雅先輩と一緒に書くことになった』
『マジか!二人の合作か~、楽しみだ』
『あんま期待すんなよ。まだなんにも決まってないんだから』
和哉は俺と雅先輩の合作に期待しているかもしれないが──申し訳ない。俺は小説の内容より先輩と仲を深められるかの方が重要視されているんだ。
『浮かれすぎて、先輩に恥かかすなよ』
「なんか、現実味のある未来を見透かされてる気分になるな」
俺が浮かれすぎて小説を軽率に扱い、全然作業が進まずに先輩に愛想を尽かされる。実に現実味があり、実に恐ろしく避けなければならない未来だ。
『善処する......』
文武両道みたいに、先輩のことと小説のことを上手く両立していかなければならない──これは、大変になるな。でも嫌じゃない。御代と付き合っていることで捨てさせられていた青春の時間を取り戻すために与えられた良い機会なんだ。
「おもしろい小説を書いて、先輩との仲を深めて......告白?」
雅先輩と付き合っている幸せな未来を想像してみる──とても幸せそうだ。しかし、現実がその通りになるわけではない。それを俺は実体験で学んでいる。
御代は教室では友達と楽しそうに話していて、嫌われているなんて話は聞いたことがない。その証拠に俺も教室では付き合う前から彼女と話すことがあった。その時は特に不快感を抱くことはなく、俺が彼女に惹かれてしまうくらいには優しく接してくれた。しかし、付き合ってから彼女は変わってしまった。
「げっ、雨降ってるじゃん──え?衛戸、傘持ってんの?ラッキー!借りてくね!」
「俺どうすんの?」
「彼女が濡れて帰るくらいなら、自分が濡れて帰るくらい言えないの?」
思えば彼女は俺に指図をしたり怒ったりするときは周囲を確認していた気がする。
きっと俺と二人でいるときが本性で、友達と話している時は猫を被った姿なのだろう。あの姿が俺以外にバレたら御代はみんなから距離を置かれるかもしれない。そう思って、二人きりの時にスマホで録音を残したことがあった。それをクラスメイトに送ろうと思ったが、仮にも女の子が自分の所為で傷ついているところを見たくなかったんだ。
「甘いな......本当に」
御代を傷つけたいわけではなかった。俺はただ恋人関係を解消したかっただけ、だから和哉に頼んで穏便に別れられる流れを用意したんだ。
「2人の彼氏から別れを告げられたら、傷つくんじゃないか?」
「それはない。御代は俺も、多分お前に対しても恋愛感情は湧かない。あいつはただ暇つぶしが欲しいだけなんだ」
和哉に言っていて虚しくなったがそれが事実なんだ。御代から俺に対する愛情を感じたのは付き合いたての頃だけだった。あの時は何かあると甘えてきて、手を繋いだり、デートしたり恋人らしいことをしていた。でも、ある時から御代からの愛情はなくなり、俺にとって苦痛な日々が始まった。
──もう、御代のことを考えるのはやめるんだ。終わったことなんだし。今は前を向いて......雅先輩と小説のことだけを考えるんだ。
思考を切り替えるために、お風呂のお湯を溜めている間に小説の案を紙に書き並べていくことにしたのだが、良い案が浮かばないまま、お風呂のお湯が溜まったことを伝えてくる機械音が鳴ったのだった。
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あとがき
本日の14:55分ほどに事件が起きていたのに気づきました。
1~3話の内容がとんでもないことになっていたこと、申し訳ございませんでした。
2話の執筆する際に、1話を改めて確認することをしなかったことによってよく分からない内容になっていました。
すぐに修正をさせていただいたのですが、修正前を読まれた方には疑問に思われた方が多いと思います。申し訳ございませんでした。
修正後の内容は修正前と比べて内容に変わりはないどころか、コピーペーストして調整しただけなので読み返していただく必要はないと思います。
対応及び確認が遅くなり、本当に申し訳ございませんでした!
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