45.記憶の裏側Ⅵ -side 伸尋-

「伸尋君、ちょっといいかな?」

 叶依のマネージャーが伸尋を呼んだのは、ラジオ収録の翌日だった。みんなで美瑛に遊びに来ていて、叶依が冬樹と車に戻った時だった。

「最近、叶依ちゃん何かあった? あ──海輝君とのこと以外で」

「最近……えっと……多分何もないと思うけど……」

 あったといえばあったけれど、ラジオの収録中に奇妙な行動をしたくらいだ。

「そう……。気のせいかもしれないんだけど、最近、仕事がかなり多いのよ。もともと多い子ではあったんだけど──。あんまり無理しないように言ってくれないかな? 私ももちろん言ってるんだけど聞いてくれなくて、このままだと体調崩しそうで心配なのよ。学校の勉強が出来てるのかも心配だし……」

 叶依のスケジュールが詰まっていることは、伸尋も知っていた。学校には相変わらずほとんどいなかったし、偶然、手帳を見せてもらった時も、フリータイムを見つけるほうが難しかった。

(ここまで働く必要あるんか?)

 三学期始業式の日の放課後、海帆が「星のことで叶依は何か隠している」と言っていた。

 星が関係して仕事を増やしているのかと思ったけれど、実際、関係は全くわからない。海輝の実家で星の話をしたけれど、仕事に影響が出るようなことは言っていなかった。

(あの星って何なん? 叶依、何か知ってそうな感じもするけど、教えてくれそうにないし……)

 伸尋は、星に関する叶依との会話を思い出した。


【星のマークのピンバッヂが出てきて、その星のところは――】

【その時によって光り方が違って、それは自分の気分と同じ】

【やっぱさ、伸尋はどこかの国の王子様なんじゃない? 叶依がお姫様、王女様で】


【私と伸尋が幼馴染──の可能性は高いと思う】

【でも、俺の、写真に叶依は写ってないけど】

【小さいときに、穴に落ちた、って言ったやん。そのとき一緒にいた友達が──記憶が正しければ、のーくん、って呼んでてん。伸尋って、そうなるやん。それに、着てた服も綺麗やったと思うし……】


(俺が王子で叶依が王女……しかも、幼馴染……やっぱわからん……)


 年が明けてしばらくしてから、叶依は体調を崩して学校を休んだ。

 伸尋が帰りにお見舞いに行くと、叶依は布団から顔を覗かせた。

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