31.信じがたい関係

 四ヶ月前に叶依が泊まっていた部屋に、再び叶依は戻っていた。あのときは一人だったけれど、今回は伸尋もいる。

 時刻は午前一時。

 ラジオの放送を終えて四人一緒に海輝の実家へ戻り、軽い食事を取ってからそれぞれ部屋に引き上げた。海輝と冬樹はどうしたかはわからないけれど、叶依と伸尋は寝るには早かった。

 叶依はともかく、伸尋のほうが叶依に聞きたいことがあった。

「なぁ、叶依、さっきのペンダント、もっかい見して」

「――ごめん、見せられへん」

 一瞬黙ってソファーに座ってから、叶依は続けた。

「さっき見せたあとで思い出してんけど、多分、本当のお母さんが私にくれて、特別なことがない限りあんまり人に見せるなって言ってたと思うんやん。だから見せられへん、って言いたいけど……どういうことなん?」

 叶依はポケットからペンダントを出して伸尋に渡した。伸尋は受け取ってから、叶依の横に腰を下ろした。

 星の光はさっきより弱くなっていた。

「なんで伸尋が持ってんの? ほんまに最近見つけたん?」

「うん。一番奥にあった。叶依は、これ……持ってて良いことあった?」

「んー……どうやろ。一番大きいのは、デビューのことかな」

 いろいろ問題を伴って、平穏だったとは言えないけれど。

「まぁ、良かったんちゃうか? だから今、ここにおるんやし」

「そっか。でも、じゃあなんで悪人に連れ去られたん? あのときもこれ持ってたのに」

「それは……もういいやん。無事に保護されてんから――はは……」

 自分の言葉にはっとして、伸尋は笑いながら紅くなっていた。

「何にしろ──問題は、なんでうちらが同じの持ってるか……。伸尋、これ、星の周りに文字書いてるの知ってた?」

 叶依が指した所には、確かに文字が書いてあった。

 伸尋のピンバッヂにも書いていた──けれど、見たこともない文字で、読める気はしない。

「こんな文字、見たことないやろ? だから、さっき二人が言ってたこと、ちょっとは当たってるんかもしれん」

「俺が王子で叶依が王女とかいうやつ?」

「うん。信じられへんけど。でも、私と伸尋が幼馴染──の可能性は高いと思う」

「え? でも、俺の、写真に叶依は写ってないけど」

 もし叶依が幼馴染なら、今さら出会わない。

 ずっとずっと仲良しで、一緒に住んでいたかもしれない。

「小さいときに、穴に落ちた、って言ったやん。そのとき一緒にいた友達が──記憶が正しければ、のーくん、って呼んでてん。伸尋って、そうなるやん。それに、着てた服も綺麗やったと思うし……」

「俺にはそんな記憶はないけどな……。叶依は、その、俺は、何て呼んでたん?」

 伸尋に聞かれ、叶依は記憶を遡ろうとした。

 すると……。


 ~~~あのね、小さい子供は長い単語は言えないの。だからあなたはその子をのーくんって呼んでたの。同じようにその子も……って言いたいけど、そうじゃないわね。詳しいことは言えないけど、あなたは、かーなたん、って呼ばれてたわ。


「……かーなたん。かーなちゃん? 今言ってた」

「誰が?」

「……わからんけど……頭の中で誰かが教えてくれた。伸尋は私のことかーなたん、って呼んでたって。ほんまやって、だって……知ってる声やもん。ラジオの時も聞こえてたし」

 叶依が言っている意味がわからずに、伸尋は顔を歪めた。

 それに、もし本当に自分たちが王子・王女なら、叶依に聞こえるものがどうして自分に聞こえないのか。自分のほうが力があるのではないのか。

 けれど今ここで口論するつもりはなかったので、伸尋は黙っていた。

「まぁ、それが事実やとしてもさ、なんでここにおるん? 幼馴染のはずが最近知りあったり、他にも色々あるけど」

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