可能な限り

 カツオを採るか。

 マグロを採るか。

 それも問題だ。

 平日、19時のラプソディ。

 今夜も始まる、サイレント、バトル。

 ツワモノ共のメシの前。

 帰宅時間もシノギも削る。

 値引シールには2割。

 待てば5割、ジャックポット。

 いけすかない連中たち。

 2割でも獲物に手を出す。

 鮮魚コーナー、氷は除去。

 クローズなムードに静かな火花。

 買い物かご持つ手に入るパワー。

 引き際を見極めるのも重要だ。

 刺身、盛り合わせ、珍しく残り。

 売場スルーするふりして、チェック、チェック。

 立ち止まるな、興味もつな。

 5割、半額シール、貼り遅れる。

 だが価格帯。

 5割でも微妙。

 2割の、いつもの、お弁当のほうが良いか。

 迷えば、採られる。

 すでに弁当、惣菜、狩場は荒らされた。

 もはや、鮮魚に望みをつなぐか。

 あるいは……。

 ふと、レジを見る。

 いつもの、あの人、いない。

 わりとキュートなレジ要員。

 いや、かなりキュート。

 声が良いのよ、大好きなのよ。

 今日、いないんだ……。

 レジのときだけランデブー。

 接客されたいランデブー。


 撤収!!

 手ぶらだが、かまうもんか。

 あの人がいないレジだったなんて。

 もっと早く気づくべきだった。

 でなきゃ、こんな遠くまで買い物に来ないよ。


 たけのこゴハンの半額に目もくれず。

 足早に立ち去れば、空きっ腹に響くアイロニー。

 武士じゃないけど高楊枝。

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