(これは寝る前に書いた)

 恋は、お手軽な狂気だ。

 そんな言葉がグルグルと頭の中のリフレイン。まったく困ったものだネ。


 君の素肌を思い出しながら、ここに、こんなことを書いている。静かなる夜だ。この町は嫌いではないけれど。君と過ごした空間を思い出してしまっては、とても悲しくなる。

 そう、ここはカナシ区。ウレシ区ではないし、タノシ区でもないからだ。


 初めて君にふれた日は。6月の日差し、悪態ついていたときで。君はただ、知らんぷりをしながらも。どこか遠くを見つめた。

 いつの間にか僕は。君にもたれるようにより沿って。ただひたすらに、ぼんやりと。半端な雲を眺めてた。

 あくる朝の早起きでも。君は何食わぬ顔をして。むしろ虚ろな眼差しで。照れる僕を見つめてた。朝早くからの逢引の。秘めた胸中バーニング。

 初めて乳房にふれたとき。君の乳房にふれたとき。じんわり伝わる体温に。僕の指先ふるえながら。君の顔色も伺えず。ただ撫でたりさすったり。愛でる気持ちの空回り。

 遠く流れる雲、雲、雲。広すぎる空を遮って。草の香りに包まれて。君と過ごした数時間。寡黙な君によりそって。君の言葉を待っていた。

 君とのんびり歩いた午後も。君を見守る木陰の午後も。君を感じた寝る前の僕も。同じ空の下の出来事。胸のときめき、騒がしい。

 君の乳房を思い出す。たわわに実った果実だなんて、月並みなことしか言えなくて。君に何を話しても、君は小首をかしげては、意味ありげな無表情。

たまには睨んでくれても良い。

 君の乳房にふれた日の、揉みしごく指も軽やかに。薄紅色の皮膚の下、あったかい血肉を感じたよ。その肌の下いっぱいに、広がり連なるイノチ、イノリ、イキオイ。

 

 そんな牛の乳搾り。

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