タイトルどころじゃない

【前回までの粗筋】

 昭和108年、みかんケーキの売上はウナギ登りであった。昇り、かもしれない。このままでは、世界中のうなぎが昇竜してしまう可能性も否定できない。そこで、プロジェクトうなぎ発動すべく、手札を2枚、墓地に送った。発動したものの、みかんケーキ陣営は余裕の表情であった。そんな時代、時計屋のケイトは今日も、恋に恋い焦がれーー


 時計屋の朝は早い。目抜き通りの爆弾騒ぎから、まだ三時間もたっちゃいない。それでもケイトの体内時計、目覚まし効果だった。腹へって起きた。

 腹時計、最強伝説。

 朝御飯は今度こそトーストとスクランブルエッグにしようと思っていたけど。今朝に限って、ふんわり味噌汁の香りがする。

 ただの味噌汁じゃなさそうだ。

 すでに、この昭和の世は、日本は、みかんケーキという巨大な資本に支配され、差配され、その富を分配されている。

 みかんケーキ無しでは生きられない。

 だが、腑に落ちない。というか、おかしい。

 なぜ、味噌汁の中にまで『みかん』が?

 これじゃ、せっかくのケイトが持つ『ラブコメの設定』を活かせないのではーー

 あぁ、時間が、無い。

 奴が来る……もうダメだ。

 なんてことだ! 窓に! 窓にっ!

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