ぼーっとしていた
砂の上に残した足跡。
振り向いて確かめた。
誰もいない、当然だ。
自分の足跡だけ。
海岸線、砂浜だったら。
少しは感傷的になれたはず。
残念ながら、ここは土場。
錆びたマシンも横たわる。
ダンプの咆哮も今は昔。
廃墟じゃない。
今日は公休日、それだけ。
もっとも、錆びついた鉄塔やら。
穴だらけの倉庫やら。
廃墟でも結構なものだ。
映画か何か、そう、何かのシーン。
ありそうな。
そんな場所までやってきて。
なだらかな砂山に登った。
死体をコンクリ詰するなら、ここだな。
なんてこと、思ってた。
でも、そんなことはしないよ。
見つけて欲しいから、埋めといた。
なのに。
いつまでたっても発見されない。
深く埋めたわけでもないのに。
仕方なく、足を伸ばして。
仕方なく、掘り起こそうと。
ところが。
どこに埋めたか、わかんなくなってた。
巧妙に隠したつもりもないけれど。
ここで……。
足元から、砂山の下から。
彼女が腕を伸ばして。
足首を掴んでくれたなら。
いや、そんなことも無さそうだ。
車が見えた。
見覚えあるよ。
おそらく刑事さん、刑事さんだ。
車を降りて、足早に向かってきて。
こう言った。
「死体は見つかったぞ」
どこです?
この辺りに埋めたはずなんですが。
「詳しい話は、あとだ」
どこにあったんだろう?
でも、見つかって良かった。
これで、一安心。
しかし、彼女は。
思ったより、しぶとい人だったんだな。
次は、そう、次こそは。
もっと深く埋めよう。
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