第22話 跳弾
目を冷ますと、俺は細胞活性装置の中にいた。
這い上がり、カプセル上の蓋を開けると、俺は瞼に残った雫を払う。
髪をかき上げ、水分を払うと、近くにあった呼び出しボタンを押す。
その間にタオルで水分を拭き取り、入院服に着替える。
するとやってきた看護師さんが軽い問診を行い、問題がないかを聞き取り出す。
「俺はどのくらい寝ていたんですか?」
「一週間よ。でも安心して。その間におきたことならまとめてあるから」
テロリストの声明発表から、日々のエネルギー問題まで。
携帯端末にデータを送ると「お大事に」と言って去る看護師さん。
俺は一人で外に出ると、足下がふらつく。
「ちょっと。大丈夫?」
肩を貸してくれたのは神住だ。
「すまない」
「いいのよ。内藤君は頑張ったんだから少しくらい休んでもいいのよ」
首をふるふると力なく振ると、ゆっくりと歩き出す。
「リハビリが必要かもしれんな」
「なら、私が手伝うね」
金の髪を揺らし明るい声で応じる神住。
「そうか。頼む」
目をパチパチさせながら驚きの声を上げる神住。
「今頼まれた!?」
「なんだよ」
俺が苛立ちを露わにし、低くうなる。
「いや~、内藤君は頼み事をしないタイプだと思っていたから。…………嬉しくて」
「え。嬉しいのか?」
俺は意外なものを見たと言わんばかりに呟く。
「ふふ。そうよ。頼まれるとうれしいものなの」
「そうか」
そんなことを言う神住の横顔はどこか嬉しそうに見えた。
頼られると嬉しい、か……。俺の知らないことがたくさんあるのだな。
それから三日でリハビリを終えた俺は、すぐさまAnDの訓練に参加した。
火月と神住、それに俺の三人チームで諸先輩方との戦いになった。神崎、如月、白崎の三人チームだ。
相手としては不足ない。
神崎は狙撃のスペシャリスト。白崎は早撃ちのガンマン。そして如月は補助能力の担い手、と呼ばれている。
三勇士とも呼ばれる三人だが、噂の先行は嬉しいものではない。敵から標的とされ、味方からは実力以上の期待をされてしまうのだから。
『日頃の鬱憤、晴らさせてもらう!』
火月の先制攻撃。レーダー外からの狙撃が白崎を撃ち落とす。
『ひゅー。もういっちょ!』
すかさず二射目を撃ち放つ火月。
放たれた銃弾が神崎の放った銃弾にぶつかり合い、跳弾、遠い彼方へと飛んでいく。
『バカな! ちっ。もう一撃』
さらに三発目の射撃を行う火月。
今度はさっきみたいな偶然は起きないだろう。
そう踏んでいたのだが、またしても跳弾させられる。
『なんなんだ! あいつは!』
大きくうなる火月を尻目に、接近していく俺と神住。
遠くから発射された銃弾をかわしつつ、ハンドガンで応戦。
接近戦にもつれ込む。
と神住の機体がこちらに向かってハンドガンを撃ち放つ。
「どうした? 神住!」
銃弾をかわしながら、無線で訊ねる。
『分からない。操作が勝手に!?』
『へへーん。神住ちゃんの操作はこっちでハッキングしたよ。あとは……こう!』
ハンドガンを撃ち放ちながら接近してくる神住。
俺は仕方なく、神住の機体を撃つ。
機体を流し、如月機へ向かう。
放った銃弾が如月の機体にヒットする。
『ありゃー。さすが内藤くんだね~』
のほほんとした口調に、調子を崩されるが、これであとは一機。
神崎だけだ。火月が未だに粘っている。
同程度の狙撃技術を持っているのか、先ほどから銃弾に銃弾をぶつけている神崎。
『ち。こいつうぜー!』
「火月。手をかそうか?」
俺が訊ねてみると、耳なりがするほどの大声を上げる火月。
『うっせー! おれ一人でやる。邪魔すんな!』
怒鳴り散らすと、照準をずらしていく火月。
その攻撃に難なく返す神崎。
『一人では無理だよ。早く仲間と連携をとるんだ』
神崎の言葉はごもっとも。
相手はたったの一機。こっちは三機いるのだから。
『うっせー! おれはやれる!』
『意味のない過剰な自信は自分を殺すことになる』
上官らしくなだめる神崎。
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