第14話 落涙
ブリーフィングを終え、俺がAnDに向かうと、ティアラが追ってくる。
「内藤くん。何かあったらわたしを助けてね?」
「構わない。でも試運転だけだろ」
「それでも! わたしを守って」
あざといな、と思いながら頷く俺。
「何があっても守ってみせるさ」
俺たちがAnDに乗り込み、試運転用のコースに横付けする輸送艦。
目の前には大きなスペースコロニーがある。
『今回は
ブラックボックスを積んだティアラのAnDが輸送艦から下ろされる。それを取り囲むように、俺たちのAnDがつく。
火月、熊野、愛、神住、そして俺が見守る中、ティアラのAnDが起動をかける。『通常運転にて、予測コースを走ります』
ティアラは発言するたび、緊張した面持ちで動かす。
予測進路を通ると、所定座標にて待機モードに入る。
『これより、ブラックボックス――Xシステム起動します』
カチッと音がなると、紅い燐光がAnDを包み込み、やがて光は収束する。
『第一段階クリア。レベルさらに上昇……』
第二段階クリア。第三段階へ移行。
と、第四段階に移ると、ティアラの様子がおかしくなる。
『機体の制御ができません!』
その声を最後に無線が途絶える。
すると、俺と神住、愛の機体がティアラに引き寄せられるようにしてついていく。
「くそ。制御が!」
俺が苦々しい声を上げていると、熊野から無線が入る。
『内藤! どうなっている!?』
「分かりません。制御不能」
『そんなバカな!』
ティアラの機体を追い詰めるように移動する俺たち。
そしてティアラの機体がスペースコロニーにぶつかる。
その特徴的な円錐状の胴体がコロニーの外壁にぶつかり、装甲をめくり上げる。
激しく打ち付け、胴体がひしゃげ、潰れていく。
『バカな。各機、救援にあたれ!』
さっきのはなんだったんだ? そしてティアラは無事なのか?
俺は機体を寄せてティアラ機を回収する。
「ティアラ。ティアラ! しっかりしろ!」
何度呼びかけても返事はない。
俺は輸送艦に回収させると、自分のAnDも輸送艦に戻す。
すぐさまAnDから降り、ティアラのもとに向かう。
「ティアラ!」
一番身近にいた俺が守ってやれなくてどうする。
守ると誓ったんじゃないのか。
俺は、なんて情けないんだ。
ティアラの乗っていたであろうAnDにとりつくと、ショックで目を疑う。
コクピットと呼べる場所がおおよそない。
円錐状のコクピットは台形の形に変形している。内包されていた翼が露出し、胴体フレームを押し広げている。
急いでストレッチャーを運び込むが、みんな一同に動きをとめる。
「なにやってんだよ。早く助けろ!」
俺は近くにあった工具でひしゃげた装甲板を剥ぎ取りにかかる。
一歩遅れた整備士の玄覺がそれに続く。
あとできた、医療班も急いで引き剥がしにかかる。
だが、そこで見えてきたのはパイロットスーツと一緒に押しつぶされたティアラだった。
「おい。しっかりしろ。おい!」
もうダメだ、と分かっていても、諦めきれずにティアラをストレッチャーに乗せる。
「見ていないで手伝えよ!」
俺は泣きながら文句を言うと、医療班が運び出す。
『Xシステム、恐ろしいですね』
『だが、あの力を使いこなせれば、革命が起きる』
冷たく言い放った上官の声に、俺は奮起する。
「何を言っているんですか! あんな危険なもの!」
俺は吐き捨てるように言うと、医療班の後を追う。
でもなんで引っ張られるように動いたのだろう。
分からない。
でも暖かい気持ちになった。一瞬すべてから解放されたような幸福感があった。
あれがXシステムの神髄?
そんなのはごめんだ。
俺は、ティアラを守れなかった。
好きな人を。
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