第13話 収束

 火月の援護を受けながら、一機のAnDに向かって飛翔する。

 エンジンが熱気を帯び放熱板から余剰熱を逃がす。

 テロリストめ。

 胸中で毒づき、肉迫する。

 そしてブレードナイトを脚部に突き刺し、エンジン部を破壊。推進力を失ったAnDは動きがとまる。アサルトライフルを撃ち続ける敵機。その両腕を切り落とすと、今度はカメラをライフルで破壊する。

 胴体だけが残った敵機だが、、フレームをパージ。胴体部だけで飛翔を始める。

 コクピットに加え、機銃を備えた脱出用ポッド。それ自体が戦闘機になるというもの。

 俺はその戦闘機にとりつき、推進装置をブレードナイトで切り落とす。

 最後のあがきと言わんばかりに機銃を撃ち放つが、対人用の武器だ。AnDには通用しない。

 機銃の穴にマニピュレータを突っ込み、逃げ場の失った炸薬がボンッと小さな爆発を上げる。

「これで、そちらの戦力はそぎ落とした」

 テロリストの確保が完了した。これで事情聴取ができるだろう。

 その代わりと言ってはなんだが、このAnDにはひどいことをしてしまった。

 俺は脱出用戦闘機を確保したまま、輸送艦へと進路をとる。

 ガイドビーコンが光の道しるべを作る。

 その光にそって輸送艦へと帰艦する。

「内藤くん、お疲れ様!」

 そう言ってティアラが拳銃を片手に拿捕した脱出用戦闘機にとりつく。他にも整備兵や火月、熊野もいる。

 全員が拳銃を向けたまま、ハッチを開放する。

 中には中年のおっさんが乗っていた。

「け。連邦の犬どもが」

 そう吐き捨てると、両手を頭につけ、コクピットから引き釣り出す。手錠と足かせをつけると、小型のシャトルに移送する。

 この輸送艦には牢屋がない。だからコロニーにある収容所に送ることになった。

「しかし、テロとは……」

「被害は?」

 俺が問うと熊野が苦い顔を向ける。

「十二機のパイロットが被害にあった。死亡した者もいれば、傷を負った者もいる」

 思ったよりも被害は大きい。

「今回のテロは、内藤あつしが背後にいるらしいぜ」

 整備士の一人がぼやくと、俺は震え上がる。

「大丈夫か? 内藤」

 熊野が心配そうに手をさしのばしてくる。

「はい。大丈夫です」

 怯えの伝わる声音で俺は応じてしまう。

「しかし……」

 それでも俺は知られたくなかった。

 テロリストの首謀者が俺の父だなんて。

「あんな父親」

 苛立ちを吐露するように、震えた拳を突き下ろす。

 俺と母さん、結愛を捨てたのだ。とうてい許せるものではない。だが、この事実を知っている者が少ないというのは俺にとって良かった点ではある。

 そこら辺の根回しは父の仕業なのだろうけど。

 俺は汗を流すため、シャワールームに入る。

 自分の汚れが落ちるように丹念に洗うが、落ちた気分にはならなかった。


 ※※※


 テロによるASGの乗っ取りから二週間。

 花菱大尉の計らいにより、俺と火月は表彰されることとなった。

 死亡したテロリストの身元確認や、拿捕した捕虜への拷問など。課題は山積みだが、これで一区切りつけたいのかもしれない。

 とにもかくにも俺と火月は表彰された。

 テロを倒すナイトとして。

 しばらくして、花菱によりアンディーの遺産、AnDボックスを得た。

 それを取り付けたAnDはティアラが試運転をすることとなった。

「しかし、なんでわたしなんだろ?」

 ティアラが疑問の声を上げると、火月がつまらなさそうに吐き捨てる。

「へ。それはこっちのセリフだっつーの」

「まあまあ、適正があるっていうんだから仕方ないでしょ?」

 神住がなだめるように言うと、火月はますます面白くなさそうに顔を歪める。

「確かに分析能力ならティアラの右に出る者はいないか」

 俺が得心いくと、火月はバカにした顔を向ける。

「てめーまで納得してんじゃねーよ。こんなのおかしいだろ」

「何がおかしいんだ?」

 熊野がドアからブリーフィングルームに入ってくると、火月が大人しくなる。

 借りてきた猫だな。

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