第12話 反乱
しばらくして戦列から離れるトリニティの一番機。
『くっ。応戦が遅れる!?』
火月がうめくように零す。
「?」
おかしい。会場に集まった警備兵が散り散りになっている。
『内藤!』
熊野の怯えた声に合わせ、俺は正面を向き直る。接近してきたトリニティ。
俺はそのタックルをかわし、ハンドガンで撃ち放つ。
二機目がタックルしてくる。
振動と衝撃により機体が揺れる。神経接続をしているせいか、痛みが走る。
宇宙をくるくると回転しながら、俺は狙いを定める。
撃ち放つ。
だが、すぐにシールドでカバーされる。その横から火月の銃弾が突き刺さる。
《試合終了! オールオーバー!》
アナウンスが鳴り響き、試合が終わる。
ふっとため息とともに吹き出す汗。
緊張状態が続いた証拠でもある。
俺はAnDを輸送艦に流す。
と、周辺の警備AnDがライフルを向けてくる。実弾だ。
俺はシールドを捨て、身体をよじる。放たれた銃弾は腰の動きでかわすが、腰に負荷がかかりすぎた。このままではまともに戦えない。
こいつらテロリストか。反乱軍だな。連合に反発したレジスタンス。
ハンドガンを撃ち放ち、相手のカメラにペイント弾を撃ち込む。
カメラが認識できなくなり、ボディにあるサブカメラに切り替える。その瞬間を狙い、敵にタックル。
ぶつかった衝撃で実弾の入ったサブマシンガンを手にすると、そのまま撃ち放つ。
「火月! 熊野!」
『てめーだけにいいかっこさせるかよ!』
熊野はすでに輸送艦に入っている。残りは俺と火月だけか。
残り燃料、20%。
やれるか?
敵はいくついるのか分からない。だが、八機いる警備用有人AnDがこうも簡単に裏切るとは。
《我々は遺伝子で優劣を競う時代は終わりにしたい。これからは民主主義の到来だ》
《我々は
《我々の使徒様ならすべての人類を愛せるお方。悩み苦しむことはない》
反乱軍の言葉が全チャンネルを通じて宇宙、いや地球の人々にも届けられる。
《不幸にも、AnDのパイロットに選ばれたものたちよ。今このときから解放されるであろう》
熱烈な言葉と息づかいに、驚きを隠せない。
俺はAnDを動かし、次の目標に向かう。
レールガンを連発できるようにしたサブマシンガンを片手に、バーニアをふかす。
デルタジェネレーターと呼ばれるエンジンが熱を上げ、回転運動をもたらす。
核融合炉。
重水素同士の融合によって生まれる熱量は核分裂の比じゃない。それに加えて安定性も確立している。
AnDが敵機に肉薄すると、サブマシンガンでコクピットを潰す。
潰れたAnDにとりつく火月。
『へ、武器は使ってなんぼなんだよ!』
荒っぽい口調でサブマシンガンを手にする火月。
そのサブマシンガンで狙撃を始める。
なんて奴だ。レーダーには乗っていない敵機を倒すとは。
しかも大型シールドを手にしている、その合間を狙うとは末恐ろしい才能だ。
俺はチームトリニティの輸送艦にとりつく。
「ブレードナイトはどうした?」
『一応格納しているけど……。まさか!?』
AnDは基本的に遠距離攻撃を得意とする戦車や戦闘機の延長線上にあるのだから。
トリニティからブレードナイトを受け取ると、そのままテロリスト集団に向かって機体を流す。
その間も、火月は狙撃をしている。ほとんどがヒットし、敵AnDの間接部が破損する。
俺も負けじと、警備AnDの一体にとりつき、ブレードナイトを突き立てる。
それを片手に宇宙を闊歩する。
「二機目。三機目」
ブレードナイトで切りつけると同時、もう片方の手でサブマシンガンを撃ち放つ。
円錐状のコクピットを破壊し、戦力をそいでいく。
だが、一機だけとんでもなく強いのがいた。恐らくは指揮官機。
『こっちは終わったぜ。内藤』
「……援護を頼む」
ゲラゲラと性格の悪そうな笑みを浮かべる火月。
渋々頼んだが、どう答えるのか。
『いいぜ』
優越感に浸る火月だった。
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