当直の夜②
その病院の当直業務は事務当直。
戸締まりと見回り、他にも電話番に急患が来た時のカルテ出しが業務。
夜中の9時までは事務所に詰める。その後は当直室にこもる。
当直室は裏入り口を入ってすぐの場所にあった。
その日は夜の8時ごろ急患がやってきてカルテを出して事務所に戻る。
X線検査も必要ないらしく9時までのんびり過ごし、9時が来たので当直室に入ろうと、診察室を除く、まだ処置は続いていた。
事務所にいてもすることはない。
戸締まりと見回りを済まし、当直室に向かうと……
「え?」
なんと当直室の前で誰かが倒れている。
どうしよう……看護師さんを呼ぶか……いや、まだ処置中だし、状態を見てこいと言われるに決まっている。
だが近寄るには勇気がいる……もしも死んでたら……
などと心の中で葛藤するが、そこは医療人、自然に倒れている人の方に足が動く。
近寄ると意識なさそう。
本当に死んでたりして……
「もしもーし、大丈夫ですか?」
と、どこかで聞いたようなせりふで尋ねる。
「……ああ、大丈夫……ちょっと、気分、悪くてなぁ……タクシーで来たんよ。」
なるほど、タクシーで来て病院に入った所で倒れたというわけか。
すぐに診察室に走り助けを呼んだ。
テレビドラマなどで人が倒れているのを見つけ、とっさに駆け寄るシーンがあるが、現実はいったん尻込みすると知った。
自分が臆病なだけか……
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