暗室

 以前はどのX線室にも暗室があった。

 ここで撮影したフィルムを取り出して現像機に流し、新しいフィルムを詰める。

 胃X線検査などは1人に10枚近く撮影するので、まとめて流すとかなりの時間がかかる。

 暗闇でひたすらフィルムを流す単調な作業……

 退屈なので歌をうたいながら作業する人もいて、つい熱唱してしまい暗室の外に声が漏れ「下手な歌、歌うなぁ!」

 とからかわれることもある。

 二日酔いで寝込んでしまい大騒ぎになったケースもあったとか。

 暗闇は怖い……

 頻繁に開閉をするのでよくドアが壊れる、

 中に閉じ込められる事故。

 数人技師がいる施設ならいいが、1人体制の所は大変、数時間閉じ込められて、異変に気づいた看護師さんに助けられたケースもある。

 ある施設の技師さんは朝出勤すると暗室に入る。そして勤務時間ずっと暗室作業を行い、定時になると出てきて帰る人がいた。

 もちろん昼ご飯も、休憩時間も暗室の中、外に出るのはトイレの時くらい。

 みんなはその人のことを暗室長と呼んでいたとか。

 変わった人が多いのもこの業界の特徴……


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