カウボーイ

 頭の病気にはさまざまなものがある。

 脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など。

 症状もさまざまあるが中には人格が変わることもある。

 その患者さんは脳出血で他の施設から転院してきた。

 ストレッチャーに乗せられ、何やら喚きながらレントゲン室へ入ってきた。

「わしゃー帰る! どこに連れていくんじゃー!」

 検査は胸部レントゲンを1枚撮るだけだが喚いて動いてなかなか撮らせてくれない。

「触るなー、わしに触るなぁ! 触るとぶっ殺すぞー」

 ぶっ殺されては行けないので逃げる。

「もう、○○さん、そんなこと言わんと、レントゲン撮ってもらおうやぁ」

 ついてきた看護師さん(女性)が近寄り背中をさする。

 こんな時は女性の方が度胸がある。

 少し落ち着いたので撮影を再開、しかしまた暴れ出す。

 こんな元気なのに検査いるのか?

 挙句の果てはストレッチャーの上に立ち上がり「家に帰らせろ!でないと、ここでションベンするぞー」と叫ぶ。

 いや……それは困る。

「もう、○○さん、やめてぇ、そんなんしたらだめ!」

 看護師さん(女性)がなだめる。

 やはり、女性はすごい。

 だが、こうなると興奮を誰も止められない。ストレッチャーから降りると撮影台にセットされている保温マットのコードつかみ片手で長縄のように振り回す。

「近寄るなぁ!」

「カウボーイか……」

 心のっこみが思わず声に出た。


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