「心霊とか本当に信じている訳では無いんだが。パートさん達が煩くてね」

 そう言って白井さんという人は頭をかいた。

 歳は四十半ばぐらいで小太りの色白な人だ。


「いえ、呼んで貰って良かったですよ。かなり多く集まってしまってるんで」

 ざっと視ただけでも三体、いや四体の霊がいる。厄介なのは玄関にいた女の霊だ。

 このおっさんにも……


「すみません、玄関に居るモノから除霊します」

 声を掛けて一人で玄関まで行き、浄めの塩を撒き経を唱える。


 すると女の霊の様子が変わり、着ていた白いワンピースが血まみれになり頭から顔にかけて潰れた様子になった。

『あなたは死んでいるんですよ。案内しますからここに居る皆と一緒に逝って下さい』


 なかなか動こうとしなかったが、灰色の作業着を着た人や殆ど影しか分からない人達と渋々上に上がって逝った。

 頭がクラクラして気持ち悪くなって来たが、後一歩だ。


「除霊終わりました。もう大丈夫ですよ」

 白井さんに近づいて、すれ違いざま肩に憑いてた霊を祓った。

 うわ、もう限界かも。おっさんから依頼料を貰い探偵が居るはずの二階へ上がって行った。


 窓を開けようとしたら、中が騒がしい。

 顔を出したら悲鳴を上げられて、ビックリした。

「皆さん大丈夫ですよー。白井さんに取り憑いてたのは除霊しましたからね」

 パートのおばさん達が先を争って事の顛末を聞きたがった。

 オレは探偵の方に応援の目線を送ったが、無視された。



「おい、ばーさん。とんでもない所に行かせやがったな」

家にやっと帰ったオレは、恨みの丈をばーさんに吐き出した。

「あれ、そうだったかな? 大した事無いような感じがしたんだけどねー」


 修行とはいえ、毎回これでは太れ無いな。恰幅の良かった白井さんを思い出し、ある意味コレで良かったと思ったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る