肆霊 望VS探偵
壱
「望、除霊の依頼が被ったから、明日の午後四時に月詠町の会社を頼みたい」
ばーさんに言われオレは意識して嫌な顔をした。隣町で尚且つ拝み屋の衣装を着替えて行くとなると、授業を早退しないと間に合わない。
「ばーさんよ。依頼受ける時にオレの事情も考慮して欲しい。こう、毎回早退してちゃヤバいって」
「悪いねぇ。次からは気を付けるし、今回は臨時ボーナス出すからヨロシク!」
親指立てて陽気に言うばーさんに『暖簾に腕押し』『糠に釘』という言葉が浮かんでは消えた。
「あ、当日依頼して来た探偵も会社に居るからね」
探偵が依頼? 何か凄く嫌な予感がして来た。
――次の日の夕方四時。
オレは例の会社の玄関先に立ち呟いていた。
「ここか――確かに霊気がビンビンだ」
「ここかぁー。幽霊会社って」
ん? 何か同時になんか言った様な……
横を向いたオレに、同年代位の男がこっちを見ていた。
「あんた誰だ?」
「アンタこそ」
今時、金髪碧眼の奴は珍しくも無いが、後ろに憑いてる先祖らしき人物も金髪碧眼なので、多分クォーターなのだろう。
「あんたの着てるのはもしかして……」
「拝み屋だけど」
「僕は赤月探偵事務所の職員、藤原始だ」
相手が名乗ったのでオレも身分を明かす。
「西条望だ。拝み屋をしている。探偵が来るとは聞いてないけど」
その時、会社の従業員らしき年配の女の人が声を掛けてきた。
「あ、こんにちは探偵さん。あら、あなたは?」
「拝み屋です。聞いてないんですか? 白井さんに呼ばれたのですが」
白井と聞いて女の人の顔が曇り、仕方なさそうに案内をされた。
「白井さーん。拝み屋さんが来てますよー」
「ホントにもう! 私達に何も言わずに勝手に決めるんだから!」
大変ご立腹らしく、探偵を連れて二階へ上がって行ってしまった。
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