round②

「望や、仕事が有るんだがね」

 ばーさんが、そうやって猫撫で声を出す時は、絶対ヤバい事になんだよ。

 オマケに母さんの前で言うなんざ、絶対断われない様にしてるし!


「何かな? ばあちゃん。オレには難しい仕事は、まだ無理だよ」

「いやね、望には修行の成果を是非見せて欲しいのさ」

 何処まで本気なのかは分からず、コクリと頷いたオレに、母さんは感動して見たいと言ってきた。

「母さんは憑きやすいから、止めておいた方が……」

 オレが言ったら、珍しく母さんは首を横に振り、キッパリと言い切った。


「いいえ、望さんの成長を見守るのが、母としての私の努めです」

 オレとばーさんは、顔を見合わせて、力なく頷いた。


「さあ、何をすれば良いのかな?」

 ばーさんに聞くと、何時ものばばぁらしくなく言い澱んでる。


「……望や。お前の足許に居る猫なんだが」

 言われて見れば、確かに足許には肥った猫が、一匹おれにスリ寄って来ている。


『望チャ~ン。待ってたわよ~』


 何処かで聞いた声だと思ったら、オカマ幽霊じゃねえか!  頭に来たオレは、ばばぁを睨み付けオカマ幽霊に怒鳴りつけた。

「テメエ……ふざけんなよ! おい、ばばぁ! 何を考えてるんだよ! 一回あの世に旅立て!」

 と言って猫を蹴り飛ばそうとしたが、母さんが泣き出したのを、視界の隅に捉えたばーさんが、手近に有った箒でオレの頭をボコッと叩いた。


「大丈夫だよ、望は霊を入れた状態だから。随分と口の悪い霊だけれどねぇ」

 納得した母さんとばーさんは、家の中へ入って行った。

 オレは気を失っていた間、猫に乗り移ったオカマ幽霊と濃密な時間を過ごしたらしい。


『悪いな望よ……取引きなのでな。修行と思い頑張れや……』

 と、ばーさんは心の中で手を合わせたらしい。オレは、ばばぁに復讐を誓ったのだった。





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