弐霊 望VS生霊
壱
『…………助け……て』
ぐっすり眠っていたオレは、囁く様な声に目を開けた。
「――だれ?」
体を起こし、完全に目覚めたオレは声の主を探す。
目の前には綺麗なお姉さん。
普段の状況ならば大歓迎だ。だけど――
ここは、オレの部屋。おまけに只今の時間は、午前三時。
この状況じゃ、手ばなしには喜べる訳が無いに決まってる。
『誰だ? あんたは……』
一応コンタクトをとってみる。拝み屋だから、初めてな訳じゃ無いし。
『……助けて。私……殺される……かも?』
かも? かもって何だよ? 分っかん無いなぁ。
『そんな事言ったって分かんないんだもん!』
口に出して言ったのでは無いが、反論して泣き出してしまった。
なんせ、生き霊だ。すすり泣くから、不気味な事このうえ無い。
『わかった! わかったから、泣きやんでくれる?』
彼女(生き霊)から話しを聞き出し、割と近くだったので行ってみる事にした。
そ~っと、出掛けようとしたが、夜中にトイレに起きて来た、ばーさんとパッタリ出会った。
「こんな夜中に何処へ行くんだい? おや、生き霊だね?」
ばーさんに事情を話し一緒に行って貰う事になった。
『ここよ……ここで殺される……のよ。わたしは……』
マンションの一室を指し、生き霊は中へ消えて行った。
「消えちゃった。どうするよ? ばーさん。って、入んのかよ!」
スタスタと中へ入って行くばーさんの後を追いオレもマンションの中へ。
マンションの二階206号室の中から、ドタバタと音が聴こえて来た。
「おい! 大丈夫か? ばーさん」
慌てて中に入ってオレが見たもの、それは――
あの、お姉さんの上に跨り首を絞めている男に、ばーさんが回し蹴りを喰らわしている場面だった。
「すみません、もうしませんから……」
ペコペコ頭を下げて謝る男女。オレとばーさんは冷ややかに見ている。
「全く! プレイ中に死んだら、全国の笑い者になるよ!」
顔を赤くしてうつ向く二人に、あまりの場面を目撃した、オレも赤面する。
「望、帰るよ!」
言うなりドシドシ歩いて行く。
「おい、ばーさん。依頼人でも無いのに金取っただろ?」
当たり前だと言う、ばーさんを敵わないな、と思う望だった。
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