弐
いま私は、何故か西条君の家に来ていて、彼のおばあさんからお祓いを受けていた。
「この者に取り憑いてる居る、20代半ばの割とイケメン男子よ……この者から出て行きたまえ~~」
そう言ってお経を唱えだして直ぐに、私の意識は薄らいだ。喩えるなら夢を見ているような……
「おぬし何故、この者に取り憑いておるのじゃ?」
おばあさんが私に問掛ける。って、私? いや、違う私に取り憑いている男に。
『ううう……かえり……たい……くる……』
私の口から嗄れた声が出て来た。
「何だって? ちょいとアンタ、言うだけ言って居なくなるたぁ、どうゆう了見だい!」
ぷりぷりと、おばあさんは私に向かい怒っている。正確には私に取り憑いている男にだが。
「え~っと、あんたに憑いていた男は、多分親戚だと思うよ。名前は確か、たくろう、そうだ、たくろうだ!」
私に向かい指を差しながら、自分の膝を叩いて高らかと宣言したおばあさんに、私は度肝を抜かれ、黙って首をカクカクしていた。
「ばーさん。そんなに畳みかける様に言っちゃあ、びっくりするだろ?」
西条君が言ってくれる。おばあさんと言ってもウチのばあちゃんと違い、紹介されなければ歳のいったお母さんでも通用する位、若いおばあさんだ。
「ふん、何言ってんだい。ケツの青いヒヨッコが!」
かなり口は悪いけど。すると西条君は顔色が変わり二人で猛喧嘩になった。こ、恐い……
「何だと、クソばばあ!」
「へん、本当の事言われたからってキレるなんざぁ、まだまだ駄目だね!」
仏壇の前だというのに、おばあさんはお盆を持ち、西条君は床の間に飾ってあった掛け軸を引き剥がし、おばあさんを脅す。
「やい、ばばあ! コレを破られたくなかったら謝るんだな!」
「わわっ、我が家先祖伝頼の家宝を……分かった、分かったから!」
西条君が、掛け軸を元に戻そうと後ろを向いた時、おばあさんはお盆で頭を叩いた。ボコッ!と鈍い音がして西条君は気を失った。
「あっ、ヒドイ……」
思わず言ってしまってから、慌てて両手で口を塞ぐ。
「まあ、大丈夫さ。それより見てご覧よ……」
おばあさんが言った途端、西条君にモヤの様なものが近付き、ユラリと西条君が起き上がった。
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