いま私は、何故か西条君の家に来ていて、彼のおばあさんからお祓いを受けていた。

「この者に取り憑いてる居る、20代半ばの割とイケメン男子よ……この者から出て行きたまえ~~」

 そう言ってお経を唱えだして直ぐに、私の意識は薄らいだ。喩えるなら夢を見ているような……


「おぬし何故、この者に取り憑いておるのじゃ?」

 おばあさんが私に問掛ける。って、私? いや、違う私に取り憑いている男に。

『ううう……かえり……たい……くる……』

 私の口から嗄れた声が出て来た。


「何だって? ちょいとアンタ、言うだけ言って居なくなるたぁ、どうゆう了見だい!」

 ぷりぷりと、おばあさんは私に向かい怒っている。正確には私に取り憑いている男にだが。


「え~っと、あんたに憑いていた男は、多分親戚だと思うよ。名前は確か、たくろう、そうだ、たくろうだ!」

 私に向かい指を差しながら、自分の膝を叩いて高らかと宣言したおばあさんに、私は度肝を抜かれ、黙って首をカクカクしていた。


「ばーさん。そんなに畳みかける様に言っちゃあ、びっくりするだろ?」

 西条君が言ってくれる。おばあさんと言ってもウチのばあちゃんと違い、紹介されなければ歳のいったお母さんでも通用する位、若いおばあさんだ。


「ふん、何言ってんだい。ケツの青いヒヨッコが!」

 かなり口は悪いけど。すると西条君は顔色が変わり二人で猛喧嘩になった。こ、恐い……

「何だと、クソばばあ!」

「へん、本当の事言われたからってキレるなんざぁ、まだまだ駄目だね!」


 仏壇の前だというのに、おばあさんはお盆を持ち、西条君は床の間に飾ってあった掛け軸を引き剥がし、おばあさんを脅す。

「やい、ばばあ! コレを破られたくなかったら謝るんだな!」

「わわっ、我が家先祖伝頼の家宝を……分かった、分かったから!」


 西条君が、掛け軸を元に戻そうと後ろを向いた時、おばあさんはお盆で頭を叩いた。ボコッ!と鈍い音がして西条君は気を失った。

「あっ、ヒドイ……」

 思わず言ってしまってから、慌てて両手で口を塞ぐ。


「まあ、大丈夫さ。それより見てご覧よ……」

 おばあさんが言った途端、西条君にモヤの様なものが近付き、ユラリと西条君が起き上がった。

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