壱霊【同級生 亮子】
壱
私が最近、夢に見るあの光景はなんだろう。
行った事の無い場所なのに、懐かしさが込み上げて来る。気付くと枕を濡らして、毎回目が覚めるのだ。
「亮子! おっはよう~」
後ろから肩を叩かれて、友達の里美が声を掛けて来た。いつもと変わらない、朝の登校の風景。だけど、今日は違った。
「亮子、ねぇ何かあった?」
そう言われたけど、別に特別な事は何もないと言いかけた時、私の方をじ~っと見てる男子に気が付いた。
「あの子って、A組の西条君だよね? もしかして、告られたとかしたの?」
里美が、からかう様に言ったけど、ジッと見つめられる覚えのない私は、彼に声を掛けた。
「ねえ、私に用事でもあるの?」
西条君は真面目な顔で、とんでもない事を言って来た。
「君、今日時間ある?」
真面目な顔で言われて顔が熱くなる。
まさか! 本当に?
里美が言った事が、頭の中でグルグル回る。
「別に、何もないけど……」
そう言ったら、西条君は放課後一緒に来て欲しい所があると言った。
きゃー信じられない! 西条君はジャニーズ系の格好良い子で、結構人気があるのに。私なんかで良いのだろうか?
里美が肘で私をつついている。目が、どうやって気を引いたのよ。教えてと言っていた。
「分かった……」
心の中とは逆にそっけなく返事をしたら、「じゃ、また」と行ってしまった。
「うわ~良いなあ。西条君かー。密かに狙ってたのに。羨ましいぜ!」
バシッと背中を叩かれながら、顔がにやけて来るのを押さえられず。でもそれが、とんでもない一日の始まりだとは、この時の私には分からなかった。
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