壱霊【同級生 亮子】

 私が最近、夢に見るあの光景はなんだろう。

 行った事の無い場所なのに、懐かしさが込み上げて来る。気付くと枕を濡らして、毎回目が覚めるのだ。


「亮子! おっはよう~」

 後ろから肩を叩かれて、友達の里美が声を掛けて来た。いつもと変わらない、朝の登校の風景。だけど、今日は違った。

「亮子、ねぇ何かあった?」

 そう言われたけど、別に特別な事は何もないと言いかけた時、私の方をじ~っと見てる男子に気が付いた。


「あの子って、A組の西条君だよね? もしかして、告られたとかしたの?」

 里美が、からかう様に言ったけど、ジッと見つめられる覚えのない私は、彼に声を掛けた。

「ねえ、私に用事でもあるの?」

 西条君は真面目な顔で、とんでもない事を言って来た。


「君、今日時間ある?」

 真面目な顔で言われて顔が熱くなる。

 まさか! 本当に?

 里美が言った事が、頭の中でグルグル回る。

「別に、何もないけど……」

 そう言ったら、西条君は放課後一緒に来て欲しい所があると言った。

 きゃー信じられない! 西条君はジャニーズ系の格好良い子で、結構人気があるのに。私なんかで良いのだろうか?

 里美が肘で私をつついている。目が、どうやって気を引いたのよ。教えてと言っていた。


「分かった……」

 心の中とは逆にそっけなく返事をしたら、「じゃ、また」と行ってしまった。

「うわ~良いなあ。西条君かー。密かに狙ってたのに。羨ましいぜ!」

 バシッと背中を叩かれながら、顔がにやけて来るのを押さえられず。でもそれが、とんでもない一日の始まりだとは、この時の私には分からなかった。

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