弐
オレの家は代々、隔醒遺伝で霊能力を持った子供が産まれる。
母方の祖母が今の家長だ。
父は、自分の実家の家業を弟に譲り、西条の家に婿養子に入った。
それが母と結婚する為の、絶対条件だったから。
祖母がまだ若かりし頃に、写真でしか見たこともない祖父は、結核というアナログな病で、この世を去った。その祖父とオレが、ドッペルゲンガーの如く、瓜りふたつ。
――迷惑な話しだ。
「ただいま――」
「帰ったよ」
二人揃って玄関で声を掛けてから中へと入る。
口は悪いが躾には厳しい祖母の教え。
「おかえりなさい。どうでしたか? 望さんは」
オレ達は顔を見会わせ、ばーさんはニヤリと笑った。
「立派に努め上げたよ。これで西条の家は安泰だね」
『ば、ばばあ。何考えてる?』
「そうですか。良かった……」
胸に手を当て、心底ホッとした母に心配かけない様に、ぎこちなく笑うオレ。
『暫くの間、ばーさんに頭が上がらないな』
気付かれない様に溜め息を付き、元気を振り絞り言う。
「じゃ、学校へ行って来るから。婆ちゃんありがと」
部屋に上がりかけた所で、ばーさんに首根っこを掴まれた。
思わず睨み付けたオレの顔を見て、母が早くも目を潤ませている。
『ヤバイっ! 泣きそうだ』
「婆ちゃん何か用?」
引きつりながらも笑顔を返し、ばーさんに聞いてみる。
そうなんだ、オレに弱点という物があるとすれば、まさしく母なんだろう。
いや、おれだけじゃ無い。父も恐らく、ばーさんも。
母のウルウル攻撃を予感した、ばーさんは極めて優しい猫なで声で話した。
うえっ、勘弁してくれ。
「望、今日は高校休んだらどうだい? 疲れただろう」
反論する余地も無く、オレは首をカクカクしていた。
『くっそう、また休みかよ。留年しちまうじゃないか』
力なく肩を落とし、部屋に上がって行くオレの背中は、さぞ哀愁が漂っていた事だろう。
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