さよならを忘れて〜なにかのなく頃に、憂鬱に別れを告げる方法

破 ReAct

破 タケシ

　どうもマギヤの様子がおかしい。

　まず、自分が、タケシこと俺と同じ部屋にいると認識していないらしい。

　単に呼ぶだけで無反応なのは言わずもがな、本人の目の前で、俺のスマホに入ってたこっちに注目せざるを得ない動きとか、いろいろやっても、まるで反応がない。

　ただ、マギヤの耳元の空間を叩いてから声をかけると反応がある。

　あと、瞬間移動（テレポート）でマギヤの目の前に現れると認識してくれる。

「いつも通りですよ」と本人は言うけど、全然いつも通りじゃないんだよなぁ〜！

　俺と同じ部屋になって、あれを言い渡されるまでのマギヤは、もっとキチンとしてたんだよ。

　それが今じゃ、トイレにも行かず、おもむろに自慰行為に及んだり、パンツはかずに洗面所に行ったり……そういえば朝飯の時も、班でまとまる所を適当な席に座ろうとしてたし、その前に髪束ねてなかったしな。

　あと、聖女ヴィーシニャさんが魔法で動いたり喋ったりする、すごい人形に見えてるらしい。

　でも人形って認識してる割には「聖女に仇なすゴミクズが！」みたいな言葉が、パッと出るんだよな……。

　マギヤの双子の弟のプリストラが言うには、母親が元聖女だとか、ヴィーシニャさんとは両親が死んでからの付き合いだとかで聖女との縁の深さから出たんじゃとか言ってたけど……。

　あれ、マギヤ、どうした？　着替えながら、いつぞやのノートばりにウリッツァの名前を連呼して……。

　うおっ？！　珍しくデカい音立てながらドアを開けて飛び出して行った？！

　てかマギヤ、学園に持ってく荷物、置いてってるぞ！

　ちょっ、待てって！　マギヤ！