序その4 マギヤ・ストノストの夢現
部屋に帰ったら手洗いうがいお着替えです。
宿題がさっさと終わり、することが無くなったのでローテーブル近くのクッションに座ると、なんだか胸が締め付けられ、ふと咳をすると花がこぼれる。
……私は何か大切なことを忘れている。「気がする」とは不思議と付かず、何かを忘れていることに妙な確信がある。
一応言うと、私が時々敬語を付けないのは単に忘れているからではないです。
単にその時、敬語を付ける気分じゃないから付けていないだけです。
私が言いたい忘れていることとは、そんな些細なことではなく、もっと重大な何かです……具体的に何かはわかりませんが……。
ああ、ウリッツァ……考えながら脱いでいるのか脱ぎながら考えているのか、というか私はなぜズボンを脱いでいるのか。
ウリッツァ……どす黒い想いとは裏腹な白い液体が手を汚す。
ティッシュを手に取り、手などに付いた白い液体を拭う。
それでも手の不快感は拭えなくて、洗面所の方へ向かう。
ズボンは……まだいいか、一人だし。いや、せめて手を洗ってすぐ、はけるように持っていってはおこう。
手を洗い、ズボン等をはいて先程いたクッションに座ると壁を叩く音が聞こえた。
「マギヤ……大丈夫か?」
寮の部屋は壁が薄いので壁を叩いたり、壁近くで話したりすると、その声や音がよく聞こえます。
「私はいつも通りですよ、タケシさん」
そ、そうなのか? と、どこか疑わしげな声をあげるタケシさん。
「他に用がないなら眠っていいですか?」
「いや、あと一時間もすれば夕飯の時間だぞ? そうだ、マギヤってゲーム興味ある? ちょっと勧めたいゲームがあってさ」
テレポートで私の目の前に現れたタケシさんが、これなんだけど、と言って私に差し出したのはタケシさんのスマートフォン……画面に、片手を上げて跳び跳ねているようなポーズをしているMと書かれた赤い帽子の男性と、ゲームのタイトル、「TAP START」などと表示されている。
画面やタケシさんの説明通りにTAPすると、亀の怪物が金髪碧眼でピンク色のドレスの姫をさらい、タイトルにいた男性が亀の怪物等を追いかけるムービーの後、ゲームが始まる。
それにしてもこのゲーム、跳躍が強すぎる……。横矢印を押しながら跳躍すれば穴などを飛び越えられるし、跳躍した足元に、足の生えたキノコなどがいたら、そのキノコなどは画面からいなくなったり動かなくなったりするし。
あ、穴を飛び越えようとしたら頭上にブロックが現れて男性が落ちました。
タケシさんにアドバイスをもらいながら、ステージクリアが表示されると、食堂で夕食をとれる時間になりました。
あのゲーム、やたらキノコ状のものが出てくるので、夕食のメニューをキノコ定食にしてしまいました。
ご飯はキノコご飯、主菜もキノコ、副菜もキノコ、汁物もキノコと、とにかくキノコ尽くしでした。
キノコと言えば……松茸に代表されるあの形状、キノコ全てが人体に無害とは限らないこと、原点に戻るようですがあのゲーム……。
赤いM、金髪碧眼でピンク色のドレスの姫、亀の怪物……ベッドの上でいろいろ考えていると私は寝落ちる。
ふと目を開けると、白い床と細いレッドカーペットが、見上げると金髪碧眼でピンク色のドレスの姫が階段の最上段からレッドカーペットの敷かれた白い階段を下りて、こちらにやってました。
姫が金髪碧眼……なのは確かなのですが、顔のパーツがなぜかまばたきするたび変わる。
ゲームで見た姫、ウリッツァ、あの女……! 気がつけば私は目の前の女を押し倒して、その首を締め上げていました。
左手で首を絞めながら、なんとなく右手を腰にやると、なにか握れた。
その形状を確かめると、私の得物の一つ、やや長い片刃剣だと気付いた。
私は剣の柄を握り、足元から女のドレスを切り裂く――私は片刃剣を、抜刀の瞬間から至近距離にいる相手を攻撃できるように腰にセットしている――。
「ドレスの下、裸じゃないですか。痴女なんですか?」
傷一つない白肌に、胸部と臀部が豊満で、それなのに腰はくびれがハッキリしていて。
首から手を離したのも、つかの間、私は剣で左下腹部からN、∞、Zなどを描くように一点一点滅多刺す。血しぶきに構わず滅多刺す。すばやく奥まで刺し抜く。勃起とそれに伴う痛みを同時に感じる。
「ああ……xxxxxxx」
うっとり誰かの名前を呼ぶ……その名前の最後の母音は……aだった。
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