急 ACUTE
急 悪魔の声は突き刺さり消えない
「廊下を走るな」という言葉を時々誰かが言われているのをよく見かける。
けれど私は今、他の誰かにそう言われうる立場にあり、つまりは廊下の石畳をひた走っている。
私よ私よ何故走る? 真の心がわかっておそろしいのか?
ウリッツァウリッツァウリッツァウリッツァ、ああ、ああ……あーあーあーあーあーっ!
カ行よりぺポかプェプォが似合うチャイムの中、ウリッツァのことばかり
そこからさらに、こう叫びながらひた走る。
「ウリッツァーッ! 私のウリッツァー! 私だけのウリッツァーーー!」
いた――「ウリッツァ・サンクトファクトル! どこへ行くのです!?」
追いかけようと脚を動かすが、まるで前に進まない。
姿なき何者かが、私を羽交い締めにでもしている気すらする。
「ウリッツァの癖に私に不可視拘束だなんて生意気な! けど、私がこの程度で引き下がると思ったら大間違いです!」
そう叫ぶと私を拘束する袖と腕が見え、拘束者の拘束を振りほどき、ウリッツァに駆け寄る。
「ウリッツァ、一度、二人になりましょう? 私のウリッツァ――――」
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