第23話 中東の地域でも、インスタとか、人気らしいです。外出も難しいコロナ禍だからこそ、家の中でマスクを作る楽しみが、できました!

 わくわく、バザール。

 パン屋の前には、焼きたてのナンを求める客たちが、列を作っていた。

 「こっちも、美味いよ!」

 ケバブ屋が、肉を、あぶりはじめた。

 夕方近く、食事時を控えて、食堂も、活気づいてきた。夜も20:00くらいまでは、ジャガイモや肉など、食欲を刺激する匂いが、バザールの細長い道全体を包み込んでいく。バザールは、不思議な空間だった。

 先ほどの、結婚披露宴の花婿に駆け寄ったお母さんじゃないけれど、戦争の悲しさが去った幸せが、バザールでも、見られた。

 「お母さん、あれ、買って!」

 そう、言っていたとか?

 親子が、何やら、1軒の商店の前で、立ち止まった。

 「良く、きたな」

 「おじさん、これ、何?」

 「わかるか?わくわくする物、さ」

 「もちろん、わかるよ。最高のおもちゃ、ばかりだもの」

 「そうだ。わかっているじゃないか」

 「たくさん、あるよね」

 「悩んでしまうだろう?」

 「うわあ、良いなあ」

 もちろん、動画では、言葉はわからなかった。

 けれど、きっと、そんな会話になっていたんじゃないか。

 母親らしき女性は、黒の、チャドル姿。

 息子と思われる子が、チャドルを、引っ張った。

 おもちゃを、ねだっていたのだろう。

 「ねえ、買ってよう!」

 「困ったわねえ」

 こんな平和が続くことを、願っていた。

 「かわいい布は、あるかしら?」

 「おや、お嬢ちゃん?どうしたんだね?」

 「マスクを、作りたいのよ」

 「そうか」

 「うん」

 「コロナ禍だからな」

 「そうよ」

 「外出も難しいコロナ禍だからこそ、家の中でマスクを作る楽しみが、できたのか?」

 「そうなのよね」

 「おじさんは、何でも、お見通しさ」

 「じゃあ、この布を、ちょうだい」

 「あいよ」

 そんなやりとりがあったのなら、面白そう。

 いや、ありそう。






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