第55話
ズドン——!
俺は一発の銃弾。銃弾は心を持たない。故に何も考えない。ただ目的に向かって飛ぶだけ。
あっ、どうもこんにちは。
被弾のアレンです。
コードネームは【無能】もしくは【変態】でしょうか。
シルフィさんの風魔法によりウリたん(闇)にまっしぐら。風穴開けられるわよ!
まさしく人間弾丸とは俺のこと。涙目です。
はぁーあ! なーにが「キミのことは必ず俺が元に戻してみせる」や! いまさら主人公ツラしてどないすんねん。
少し前の自分をブン殴りたい。帰りたい。帰って食っちゃ寝ボディタッチリバーシしたい。
現況を補足する前に前回までのあらすじを紹介しておきましょう。安心してください。簡潔にお話ししますので。
その数なんと三万⁉︎ 事前に聞いていた十倍の魔物が押し寄せる!!
九桜の役立たず! 脳筋野郎め! (最初から三万とわかっていたらこの場に【色欲】の魔王は間違いなくいたはずだ!)
【調教】スキルカンスト娘「私、人が襲われるところを見たくないです!」必死の嘆願。
副音声「自我を失う【凶悪化】で暴れ回りたいです!」
アレンさん「(俺は物理的に尻を拭いたいんだ。尻を持ち込む(後始末を迫る意)のは物理的にして欲しい。何度も言うよ。尻拭いは物理的にさせて欲しい)——、
——行きなさいウリたん! 誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために!」
ウリたん「ワオオォォォォォォーン!!」
案の定、大暴走。
シルフィたち一同「アレン抱擁よ!」
違う! こんなん違う! 世界の命運を委ねられる主人公——まさしくその状況なのに俺が思てたんと全然ちゃう。
クリントンと栗きんとんぐらい違う!!
いや、自分でもパニックで意味不明やけど!
というわけで以上が前回のあらすじ。ここからが本編。【アレンロケット】の全貌——作戦の補足である。
諸君らはアメーバをご存知か?
「知ってる! お兄ちゃんのことだよね⁉︎」とは前世の美月ちゃんである。
誰が単細胞生物やねん。
彼らは分裂によって増殖することができる。女神から【再生】を授かったとき、俺はある可能性が脳裏によぎった。
——俺はもしかしてアメーバになれるんじゃないか、と。
女神「たしかに。アレンさんとアメーバ、ほとんど同じですもんね」
お前らマジでブッ飛ばすぞ。アメーバとほとんど同じって何やねん。どこがや。どこが同じか言うてみ!
女神「見た目と単細胞なところでしょうか?」
泣くぞ。
頭が単細胞は覚悟してたけど、見た目はあかんやろ。見た目は。
閑話休題。
アメーバは無限の寿命であることはご存知の方も多いだろう。
老化せず、何回も分裂することができる。そもそもアメーバの由来は『定まった形がない』から来ている。
えーと、何を伝えたいかと申し上げますと、吾輩、細胞の一片から【再生】することが出来ましてね。
おい、誰だいま気持ち悪って言ったの。
これからショッキング&グロテスクな光景をお見せすることになるかもしれません。
【アレンロケット】の作戦はこうなります。
まず天狐、ネク、シルフィ、ノエル、アウラ、九桜、凛ちゃん、エルフにドワーフ、鬼たちが一斉に猛撃します。
全方位からの集中砲火です。
えっ、
【色欲】の魔王軍No.3天狐の火魔法【業火柱】を受けてピンピンしてるじゃないですか。どうやら瞬時再生の肉体を得ているようで、かすり傷一つ付いておりません。
……こっわ!
というわけでみなさんお持ちの強力な
そこに
ウリたん(闇)も己が凶悪であることを無意識下で理解しているはずですから、そんな対象に生身の人間が向かってくるわけがないと盲目になっていることでしょう。
油断したその隙にぎゅっと。ぎゅぅ〜っと熱い抱擁をお見舞いしてやりますよ!
おっぱいを鷲掴んだり、太ももをスリスリしたり、首筋をくんかくんかしたり、いけないところに手を忍ばせてやりますよ!
いやー辛いわ。これからあの轢殺堕天使ウリエルちゃんの躰を好き放題しないといけないとか辛いわー。
アレンワクワクする!
どさくさに紛れてサイテー? 女の敵?
うるせえ! そうでもしなきゃやってられるか! あの光景見てみい!
魔物を
ムチ狂いや。ムチ狂いの殺戮やぞ。
これからあの悪魔に生身の肉体で発射する? 正気に沙汰じゃねえ!
打ち上げに成功したときの報酬——役得がなきゃ、やってられねえだろうが!
「アレン! 準備ができたわ!」
とシルフィさん。
正直に申し上げますとね、作戦概要を伝えたら一人ぐらい【アレンロケット】を却下してくれるんじゃないかなって思ってたんですよ。
この順応性の高さよ。いや、誰か一人ぐらい止めろや!
「村長さんが危険な目にあうのは嫌なんです」
「すまない。でもこうするしか——これしかないんだ!」
みたいなやりとりさせろや。なに一瞬で受け入れてもうとんねん。
チミらまさか、作戦失敗しても逝くのはアレンだし、ノー問題とか思ってへんやろな⁉︎
はい。
そんな不満を胸に抱いている間にウリたんの動きを止めさせるため、全員一斉の強力魔法!
というわけで冒頭。俺は一発の弾丸——銃弾は心を持——ズトン!——シルフィさんが躊躇なく俺を発射します。
俺が【再生】持ちやからって何してもええわけちゃうからな? いや、作戦を名乗り出たのはまごうことなく、俺やけど。
クソッ、こんなことならウリたんのご主人さまをシルフィにしておけば良かったか。
天使族は依存に近いほど主人に愛情が芽生える種族だと聞いて目が眩んでしまったことが悔やまれる。
純情で素直で健気で良い匂いがして柔らかくて甲斐甲斐しく世話を焼いてくれて、エッチさせてとお願いしたら簡単にやらせてくれそうとか、そういうのに理性を奪い取られちゃった。
Fカップ以上のおっぱいとか、むちむちの太ももとか、色んなところが柔らかいとかスケベ心が俺に正常な思考回路を奪い去った。
女に甘い性格——というかスケベも考えものだな。ちょっとは反省した方がいいのかもしれない。
少なくともこんな無茶な作戦を実行しなくていいぐらいには理性を働かせたい所存。
女神「安心してください。バカは死んでもバカですから」
何が言いたいのか今ひとつ理解できないですが、とりあえずバカにしていることだけはわかった。覚えとけよクソ女神。
爆炎が晴れてガラ空きの背中を目掛けて猪突猛進。
おっ、これは案外、楽々抱きつけるのでは——バッチン!!!!!!!!!!!!!!
完璧に後ろを取ったと油断していた次の瞬間、堕天使が旋回。
ウリエル(闇)と弾丸アレンさんの視線が合います。
はい死んだ。ウリたんからすればアレンロケットなど止まって見えるのか、ペチペチと神短鞭を掌でしならせます。
本来、女の子に鞭で叩いてもらうのはご褒美のはずなんですけどね。
それではみなさんさようなら。
『アレン(様)!』
気分はそうですね。砕け散っていくところを見せてあげる、でしょうか。
悲鳴が入り混じったような声と共に俺の意識はブラックアウト。
意識を失う寸前ベチャッという音が聞こえましたので、まあ、たぶん、返り血や細胞の一片ぐらいは付着したと思います。
作戦成功ですね。
「チッ、汚ねえ花火だな」
☆
オリュンポス十二神&女神
「アレンのことか——————!!!!」
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